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連隊の娘
第二幕その三
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第二幕その三

「だからいいわ。それよりもね」
「それよりも?」
「お菓子を持って来るから」
 自分から持って来るというのである。
「皆で食べましょう。ホルテンシウスさんも呼んでね」
「メイドさん達も」
「そうよ。皆で食べましょう」
 こう言うのである。
「丁度三時だしね」
「ええ。じゃあ」
「お菓子はチョコレートがいいかしら」
 早速何を食べようかと考えはじめる侯爵夫人だった。部屋を出る扉に向かいながら顔を上げて顎に右手の人差し指をやって述べる。
「それと。コーヒーね」
「奥様」
 シェルピスがその彼女のところにやって来て言う。
「では私もお手伝いを」
「ええ、御願いするわ」
「はい、それでは」
 こうして二人で部屋を出る。部屋にはマリーだけが残った。一人になったマリーは窓の外を物憂げな顔で言うのであった。
「高い身分に贅沢な暮らし」 
 今の彼女の境遇である。
「それが何だというの?そんなものがあっても」
 その顔で呟き続ける。
「何にもならないわ。ここには皆はいない」
 連隊の皆である。
「軍曹はいてくれるけれど皆はいない。あの懐かしい行進曲も聴こえない」
 軍に付き物のそれである。これなくして軍ではないと言っても過言ではない。
「そして朝のラッパも。点呼の大砲や笛の声もなければ勇ましい掛け声もない」
 全てが彼女にとってかけがえのないものになっていたのだ。
「勝利を祝う宴もなければ馬達もいない。それに」
 ここで彼のことを思い出したのである。
「トニオもいないわ。何もないのよ、ここには」
 嘆きは深まるばかりであった。しかしその嘆きは突如として切り裂かれそのうえで瞬く間に投げ捨てられることになったのであった。
 突如として城の周りに。マリーが望んでいたあの曲が聴こえてきたのだ。
「あの曲は」
「さあ進もう諸君」
「勝利に向かって」
 行進曲であった。そしてその曲に合わせて歌声も聴こえてきた。
「今こそ我等が突撃し」
「勝利を手にするのだ」
「進め、フランスの兵士達」
「栄光が君達を待っているぞ」
「間違いないわ」
 ここでまで聞いて確信したマリーであった。
「あの歌は。それにあの歌声は」
 彼女がその行進曲と歌声に戸惑っているとだった。部屋の中に懐かしい彼等が雪崩れ込んで来たのであった。
「やあマリー」
「久し振りだね」
 彼等であった。兵士達は瞬く間にマリーの周りに集ったのであった。
「元気だったかい?」
「見たところあまりそうじゃないみたいだけれど」
「いえ、今元気になったわ」
 しかしマリーは笑顔で彼等にこう返した。
「皆の顔を見られたから」
「そうか、それは何よりだ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
「全くだ」
 兵士達
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