第1章 アクセサリー
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…」
「おいおい。自分が何者かを忘れたのか?」
さっきから聞こえる声は一体なんのだ。
俺の後方から聞こえる声が何かを確認するために思い切って後ろを向いた。そこにいたのは普通の青年のように見えた。金髪に整った顔立ち。何故か服は騎士の甲冑に思える。
「こうして対面するのは初めてかな? 僕の名前ー……。ないね」
しかもいい声だ。
「名前がないってなんだ?」
「見ての通り。僕は足は少し透けているし浮いている。どこからどうみても幽霊だ。そして名前はない。生前の時に呼ばれていた名前なんてもう憶えていないよ。そうだなー。僕は君のどうでもいいようなアクセサリーに取り憑いているわけなんだけど……。君のズボンのポケットに入っている物だ」
そういわれてズボンのポケットを弄ると金色の四角いアクセサリーが出てきた。
「これは……ちょっと暇なときに遊んでいたアクセサリーだ……」
「そうそれそれ。見た目と形から取って……ゴールド・キューブなんてどうだい? いちいち名前考えるのも面倒だし最近はキラキラネームとかいう当て字で名前付けられるのも嫌だしさ」
「で、ゴールドキューブ。お前は何者なんだ?」
「ん? はは。そうだったそうだった」
ゴールドキューブは爽やかに笑う。そして向こうを指さす。
「君の力であり、僕の力だ」
ゴールドキューブが指をさしたもの。それはさっき俺を襲ったあの犯人だった。亀がひっくり返されたかのように無様にもがいている。
「あれ……は?」
「そっか。知らないよな。まあいいや。ちゃんと後で説明するよ。そんなことよりあいつの胸に手を当ててみな」
「え? でも」
今のあいつはもがいてはいるがあいつの殺意は目に見えて分かる。もし近づいたら襲って来るかもしれない。
「ガルルルルルララララララ!」
耳を抑えるほどの咆哮。絶対に襲われる。
「大丈夫だって。今のあいつはもがいているけど君を襲うほどは動けないからさ」
確かに、よく見るとそこまで動けていない。恐怖が後押しして大きく動いているように俺の脳が勘違いしていたんだ。
「ほら、右の胸を、心臓のあたりに手をのせてみな」
俺はこのゴールドキューブが言ったとおりに、胸の右あたりに右の手の平を置いた。
犯人と思われるこいつはゴールドキューブが言っていた通り何もできなかった。
「じゃあその置いた手に少し力を入れてみてくれ。こうグッとするかんじで」
俺は言われたとおりに、右の手のひらにグッと少し力を入れた。
すると何が起きたのか、犯人はいきなり動かなくなって口から血を吐いた。同時に脈が、生命活動が停止したようにも感じた。
「う、うわああああ!」
動揺し恐怖した俺は思いっきり後ろに後ずさりした。生命活動が停止したかのように感じた。それは……俺が人を殺したってこと
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