暁 〜小説投稿サイト〜
ゴーストパーティ
第1章 アクセサリー
[3/5]

[1] [9] 最後 最初
の俺とあの食人鬼のことだ。
 俺は腰が抜けてその場に尻餅をついてしまった。
「見たな……?」
 食人鬼は俺を睨みながら言った。
 そして俺は気づいた。こいつには絶対に勝てないと。逃げるしかできないと。さっきまでの熱い興奮が一気に冷めたのが分かった。
「っはうぁ……」
 息が十分にできないほどの緊張。
 死を……覚悟した瞬間だった。
「グルルルルルルルラアアアアアアア!」
 食人鬼は獣のような雄叫びを上げて俺向かって突進してきた。早すぎて反応に時間がかかるほどだった。
 人間は普段、半分も自分の力を発揮しない。何故なら発揮すれば自らの体を傷つけてしまうからだ。
 だが俺には分かった。自分がこの一瞬、100%の力を発揮したことを。
 反応に無理がある相手にでも余裕で反応ができたのだ。それも一瞬。
「ぐああっ!」
 なんとか避けれた。だが、そのまま逃げれるほど俺の体は丈夫じゃなかったようだ。
 一瞬だけ100%の本気を出した俺の体はそれだけで動かなくなった。
「なっ」
 俺の体からエネルギーがすり抜ける感覚がした。
 力なく地面に倒れこんでしまった。
「グルルァ……」
 あいつが近づいてくるのが分かる。
 俺は仰向けになり無様に体を引きずりながら逃げる。重い。全身が重い。俺の体が、もう動かない。限界だ。
「はぁ……なんだよもう」
 急に自分の人生が馬鹿馬鹿しくなった。
「はは、これじゃあ美紀と一緒でこいつの養分になるだけかよ」
 俺は自分でも驚くほど脱力しその場に背を付けた。
 走馬灯に駆られている間に食人鬼は俺を馬乗りしていた。
 腹と腕は抑えられてもう動けない。
「ハァア……」
 食人鬼の生々しい息が俺の頬に当たるのを感じる。
「いい人生……だったとは言えないな」
 最後の最後に悔いを残した人生だった。
 俺はゆっくりと目をつぶり死を受け入れた。
 すると突然体が軽くなった感じがした。
 ああ……。きっと死んだんだ。今頃あいつは俺の体を貪り喰っているに違いない。
 すまないな……美紀。
「まだ逝くのは早くないかい?」
 上の方から声が聞こえた。きっと神様だ。
 もう戻るところなんてないですよ。
 と心の中で思った。神様なら俺の心くらい簡単に読んでしまうはずだ。
「何をしている。早く起き上がって逃げなければ」
 この声は一体何を言っているのだ? 俺は死んだのだ。もう還る体などない。
「おい! 何を寝ている! 君はまだ生きているのだぞ!」
 パチリと目が覚める。
「生きている?」
「ああ。君はまだ死んではいない。生きているんだ」
 た、確かにまだ体がある。さっき倒れこんだ場所と同じ場所だ。
 体が軽くなったのは食人鬼が俺の上から消えたからだ。
「一体……何が起きたのだ…
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ