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連隊の娘
第一幕その十一
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「それは」
「しかしだ」
 トニオは項垂れる彼にさらに告げた。
「希望はあるぞ」
「あるんですか」
「君が武勲を挙げてそれをマリーの前に差し出せばだ」
「それで一緒になれるんですね」
「そうだ。マリーが貴族の御令嬢になったとしてもだ」
 それでもだというのである。武勲を挙げればだ。
「都合のいいことに今我が軍は忙しい」
「戦争で、ですね」
「オーストリアにプロイセンにロシアにイギリスだ」
 ほぼ欧州中を相手に戦争していたのである。革命が起こった直後のフランスは。そしてその中からナポレオンという男も出て来るのである。
「武勲を挙げるべき相手は幾らでもいるぞ」
「それじゃあ僕は」
「頑張るのだ」
 こう言って彼を励ましたのであった。
「わかったな」
「はい、やってみせます」
 入隊して早々意気込むことになった。
「そして隊長になります」
「将軍にもなれるぞ」
 この時のフランス軍はそうであった。武勲を挙げれば将軍になれたのである。実際にナポレオンもしがない砲兵将校から瞬く間に将軍になっている。
「わかったな」
「よくわかりました」
「じゃあ皆」 
 ここでマリーが涙を流しながら皆に告げる。
「さようなら」
「さようなら、マリー」
「元気でな」
 兵士達も別れを惜しむ顔で彼女に告げる。
「また会おうな」
「その時にまた飲もう」
「ええ、心ゆくまで」
「じゃあマリー」 
 侯爵夫人が彼女の横からそっと声をかけてきた。
「帰りましょう、私達のお城へ」
「ええ、伯母様」
 伯母の言葉にこくりと頷く。そうして彼女は連隊を後にした。トニオ達に涙ながらに見送られながら。

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