第二十五話 夜の難波その十一
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「ただ。ご本人だったら」
「んっ?何かあったのかい?」
「サイン貰ってればよかったですね」
「ああ、サインならな」
おじさんは笑ってカウンターの壁を見た、そこには多くのサイン入りの色紙があった。その色紙達の主はというと。
「吉本に松竹にタイガースにバファローズに」
「色々ですね」
「芸人さんやプロ野球に」
「あと歌舞伎の人もだよ」
こちらもだった。
「来てるよ」
「へえ、歌舞伎役者の人もですか」
「来られるんですね」
「そうだよ、あとレスラーや力士jの人もね」
巡業で来るのだ。
「来てるよ」
「ううん、レスラーの人とか力士の人って」
ここで言ったのは彩夏だ、うずらの卵の串カツを食べている。
「物凄く食べますよね」
「ああ、凄いよ」
「実際にどれ位ですか?」
「まずは酒から言うよ」
そこからだった。
「さっき話した外人の探偵さん位飲んでね」
「ビールを何リットルもですか」
「もうごくごくなんてものじゃなくて」
ではどういった感じかというと。
「鯨みたいに飲むよ」
「鯨ですか」
「鯨飲っていう言葉があるけれど」
鯨というだけでわかることだった、鯨はとかく飲むものである。
「そんな勢いでね」
「何リットルも一気に」
「そう、ビールとも限らないよ」
焼酎や日本酒もというのだ。
「そういうのをどんどん飲んでいくんだよ」
「やっぱり身体が大きいからですか」
「大きいし毎日凄い稽古だからね」
おじさんは力士を主にして話した、レスラーならばトレーニングとなるからだ。
「だから飲むのも凄いんだよ」
「お酒もですか」
「そして食うのもさ」
続いてこれだった。
「そっちもだよ」
「そっちはどんなのですか?」
「二百本位はね」
こちらも桁外れだった。
「食っちまうね」
「力士さんたプロレスラーの人って食べるのもお仕事だから」
琴乃が言った。
「だからですね」
「そうそう、ああした人達は食うのも仕事だよ」
「それで二百本もですか」
「食うんだよ、ああした人達は本当に特別だからね」
「とてもそこまでは」
「五十位ならまあ食べる人もいるよ」
それ位ならというのだ。
「まあね」
「それでもですね」
「ああ、二百にもなると」
単純に数えて四倍だ、ただ食べるとなると蓄積されるのでただ四倍になるだけではないのである。このことが食べるにあたっての問題になることだ。
「そうそういないだろ」
「というか流石ですね」
美優は話を聞いて唸りながら言った、普段は砕けた口調だがおじさんが年上なので敬意を払って敬語を使っている。
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