第二十三章
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「じゃあ。闘技場の中にこそ」
スサノオがいるとだ。そう考えたのだった。そしてだった。
通路を駆け闘技場に入った。円形の戦う場を上から囲む観客席には誰もいない。静まり返っていた。
闘技場の中は無数のライトに照らされている。しかしだった。
そこには誰もいなかった。本当に誰もだ。闘技場の中も観客席もだ。
いるのはオーズだけだった。彼は円形のその場の中央に来た。そのうえで周りを見回したところでだ。
あの声が聞こえてきた。声はこうオーズに言ってきた。
「ふふふ、来てくれたな」
「その声はやっぱり」
「そう、私なのだよ」
声は余裕に満ちた声でだ。オーズに答える。
「とはいっても驚いてはいないな」
「いると思っていたから」
それでだとだ。答えるオーズだとだ。今度は彼が答えたのである。
「特にね。驚いてはいないよ」
「そうか。流石だと言うべきか」
「一つ聞いておきたいんだけれどいいかな」
「グリードのことか」
「グリードもだよな」
オーズは顔を上げていた。声が聴こえる方にだ。そのうえで声の主であるスサノオに問うたのだ。
「御前が生み出した存在なんだよな」
「如何にも」
その余裕で満ちた声でだ。スサノオはオーズに言葉を返す。
「その通りだ。八百年前に彼等を作ったのは私だ」
「欲望を見る為に」
「人は欲望によって何かを為す。しかし人は欲望により満たされることがあるのか」
「それだけじゃないな」
「そうだ。そしてグリードは欲望に基き動くがそこから人になれるかどうか」
「そういったものを見る為に」
「私は彼等を作ったのだよ」
スサノオは誇らしげにオーズに答える。
「君の考えている通りだ」
「そういうことだな。やはり」
「そういうことだよ。しかしだ」
「しかし?」
「人は欲望から何かを為せるだけではなく満たされることも、そしてグリードもだ」
「それは違う」
オーズはスサノオの今の言葉はあえて言わせなかった。そしてだ。
そのうえでだ。また言ったのである。
「アンクは、グリード達は最初から人間だったんだ」
「ほう、そう思っているのだな君は」
「思っているんじゃない。確信しているんだ」
そうだというのだ。思っているのではなくだ。
それだというのだ。確信だとだ。
「俺はアンクも他のグリード達も人間だと確信しているんだ」
「そう確信できる根拠は何かね?」
「心だ、欲望を持ちそれで何かを為そうと動き満たされるからだ」
そうした一連のことが可能だからだとだ。オーズはあくまでこう言えた。
「アンクも他のグリード達も人間なんだ」
「そうか。ではだ」
「俺の言葉は聞いたよな」
「確かに聞いた」
スサノオも確かな声でオーズに返した。
「それでははじめるとするか」
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