第三十三話〜R2・愛と哀〜
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ことにライは気付いた。しかしアーニャはライの反応を待たずに言葉を続ける。
「私には時々記憶が記録と違う時がある。記憶が無くて、記録がある時がある。記憶あって、記録が無い時がある。だから……」
アーニャの言葉はそこで途切れる。彼女の隣でライは思う。
(彼女は“昔”の僕と同じだ)
記憶を失くし、アッシュフォード学園での生活を続ける中でライも恐怖を感じていた。それは記憶が無いことで自分という個がはっきりしていなかったからである。自分で自分がわからないという言葉をそのまま当てはめている状態。それが今のアーニャと昔のライ。その怖さを知っていたからこそライは口を開く。
「僕は覚えているよ」
「……え」
一言言った後、ライはアーニャに笑顔を向けながら言葉を紡ぐ。
「君と廊下で初めて会った時のこと。君と初めて挨拶した時のこと。今日初めて君と街に出かけたこと」
「………」
ライの言葉にアーニャは少し困惑した表情をする。
「うん、それは確かに僕の記憶として残っている。だからもし、君がまたそのことを忘れても教えてあげるよ」
「……でも…」
アーニャはそれでも不安を拭えないような顔をしていた。だがライはそれでも笑顔を崩さずに言う。
「それでも君が思い出せないのであれば、また新しく作ろう」
「……なに…を?…」
「“思い出”を」
ライの言葉に安心したのかアーニャは救われたような表情をしていた。
六課の中でこの記憶の有無の話に特に反応していたのはヴォルケンリッターとフェイトである。フェイトは自分が持つ記憶が自分のものでないことに一度絶望したことがある。だから、食い違う記憶を持つことの不安を持つアーニャの気持ちがなんとなく察することができた。
そしてヴォルケンリッターは失った記憶のせいで、自分が守るべき主の魔道書の名前すら間違って記憶していた。その為、存在しない自らの記憶が自分という個の存在の証明にならないことの怖さを身にしみて知っていた。
数日後、卒業に必要な単位を全て取得したミレイが卒業イベントとしてある企画を考案する。その名は『キューピッドの日』という、ある意味ルルーシュにとっては都合の良い企画である。その内容は好きな人がかぶっている帽子を獲ると恋人になれるというもの。
ルルーシュはこのイベントを機に咲世子が築いてしまった人間関係を払拭しようとある意味意気込んでいた。
逆にライは自分が転校してきたばかりで特に好意を寄せられる相手も寄せる相手もいないと思っていた。だが、本人が気付いていないだけでライの容姿や優しい人柄に惹かれている女生徒は多くいた。
そして企画当日、万全な計画を立てたつもりでいるルルーシュの考えを覆すことをミレイは言い始
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