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トーゴの異世界無双
第三十話 おお……痺れたぞ
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、目の前にいたリューイがいきなり加速した。


「なっ!?」


 これはミラニの速さを越えている。
 闘悟の背後に回ったリューイは力一杯剣を振る。


「『電雷瞬衡(ボルテスクイック)』……貴様を屠(ほふ)った技だっ!!!」


 本来なら、この状況で立会人が止める。
 しかし、買収されている立会人は動かない。
 命の危険があるこんな状況でも動かない立会人に、周りもギョッとする。
 しかし、刃は容赦無く闘悟に向かって来る。
 このままでは、首が寸断される。


 クィルが叫ぶ。
 ミラニが拳に力を込める。
 カイバが歯を食いしばる。
 メイムが目を見開く。
 ヒナが口を開ける。


 その場にいた誰もが、多かれ少なかれ闘悟の負傷を確信した。
 瞬間、沈黙が辺りを支配する。
 その静けさを破ったのは、刃物が地面に落ちる音だった。
 何が起こったのか、ただ一人を除いて理解できてはいなかった。
 皆が思った。
 皆が動揺した。
 皆が言葉を失くした。
 何故なら、リューイが持っていた剣が、根元から粉砕されていたからだ。
 その刃片が地面に転がっている。


 そして、当のリューイはというと、体を小刻みに震わせていた。
 リューイは自分の中から湧き出てくる熱いものを感じる。
 それが徐々に喉まで競り上がってくる。
 駄目だ、もう我慢できない。


「がはぁっ!」


 その場で嘔吐してしまう。
 その光景を見て平然としているのは、闘悟ただ一人だけだった。
 リューイは腹を押さえながら地面に倒れている。
 その姿を誰もが瞬(まばた)きを忘れて見入っている。


「ぐぅ……が……き……さま……な……にを……」


 もちろんリューイ本人にも何が起こったのか分からない。
 この場の理解者、闘悟を除いては。


「ん? 蹴っただけだけど?」



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