第三十三話 伝言
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チで頂くぜ』
え、そういう事? つまり遷都後のヴァルハラはワーグナー一家の縄張りって事が今決まったのかよ、とんでもねえ話だな。そういう事か、だから俺とリスナーが同席してるのか……。準備をしなくちゃならねえな、他が気付いて動く前にウチで準備を終わらせておく。親っさんとも頻繁に打ち合わせをする事になるだろう。忙しくなるぜ、今以上に忙しくなる……。
宇宙歴 798年 9月12日 ハイネセン ヤン・ウェンリー
「久しぶりだね、ボリス」
「ああ、最後に会ってから十五年以上は経ったからな」
「そうなるね。良く訪ねてくれた、色々と話したい事が有るんだ」
「俺もだ、話さなくちゃならない事がある」
あの悪たれボリスが今では独立交易船の船長か……。そうなるだろうとは思っていたが、本当に船長になったのだと思うとちょっと不思議な気持ちがする。
ユリアンが紅茶を用意した後、何か足りない物が有ったら声をかけて欲しいと言って奥に消えた。
「良い子だな、ヤン」
「ああ、あの子のおかげで随分と助かっているよ」
紅茶を一口飲んだ、ボリスも紅茶を飲んでいる。カップをテーブルに置くとボリスも同じようにカップをテーブルに置いた。そしてじっとこちらを見ている。表情が硬い、緊張しているようだ。何故だ?
「ボリス、フェザーンの状況を教えてくれ。フェザーンで反帝国運動が起きる気配は無いかな」
ボリスが首を横に振りながら息を吐いた。
「難しいだろうな」
「何故だ、フェザーン人は独立不羈、他からの束縛を嫌うと思うんだが」
またボリスが息を吐いた。どうもおかしい。
「ヤン、あんたが何を考えているかは分かっている。帝国軍が侵攻した後、フェザーンで反帝国運動を起こさせる。それに合わせて反撃する事で帝国軍を撃退したい。あるいは帝国軍に同盟領侵攻そのものを断念させたい、そんなところだろう」
ボリスの言葉にうなずいた。
「そうだ、上手く行けばフェザーンの独立も可能かもしれない」
騙すつもりは無いが可能性は低いだろう、だがゼロではない……。ボリスがカップを取り上げ一口飲んだ。表情は苦い、ボリスも可能性の低さを思ったのだろうか……。
「あんたが考えた事は俺も考えた。そして他にも同じ事を考えた奴が居る」
「どういう事かな」
嫌な予感がした。誰かが何かをしたという事か、フェザーンを押さえる何かを……。ボリスが微かに嗤った。笑ったのではない、確かに嗤った。
「黒姫さ、同盟の優良企業が黒姫の物になっただろう、それと同じ事がフェザーンでも起きている。黒姫は銀行、輸送会社、エネルギー会社を押さえているんだ。フェザーンは船乗りの国だ。下手に騒げば黒姫に圧力をかけられて船を出せなくなる。皆それを恐れている」
溜息が出た。帝国軍を
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