反転した世界にて4
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い」
荒井くんはさり気なく、ドリンクのお替りを頼んだ。
ウェイターがカップにコーヒーとカフェオレを注いでいるのを眺めながら、僕は話すべき事柄を吟味する。
「ごゆっくりどうぞー」
「……じゃあ」
「おう」
ウェイターが去って行ったのを合図にして、僕は重い口を開いた。
――幼少期からのトラウマと、先ほどは省略した、より具体的な高校生活を。
出来るだけ客観的になるように、ありのままに話す。
客観的に、とは言ったって、話すのは僕だ。ガリガリと何か大切なものを削りながら、絞り出すようにして話を続けているうちに、誇張した表現や、主観的な感情が先走ってしまった部分が、たくさんあったと思う。
しかし、荒井くんはそんな僕の要領を得ない話を、先ほどと同じようにじっと目を瞑って、静聴していた。
「――、……こんな、ところかな」
「――まとめるぞ。拓郎は自分のことを超絶ブサ面だと認識している。周りからもそう言われて、付いたあだ名は女もやし"」
「あだ名は昔の話だべらんめい」
「クラスの女子からは度々陰口を叩かれて、電車内で隣り合わせになろうものなら距離を取られる、そんなレベルの、非モテブサ面一生童貞候補。――で、間違いないんだな?」
「……その通りだよ畜生め」
荒井くんの述べる口上は、僕が延々長い時間かけて語っていた内容を、すっきりと明快にまとめただけのものだ。
だから、ここで僕が腹を立てたりするのは筋違い甚だしいこと。
それを理解したうえで、目を背けたくなるような現実を淡々と突きつけられて、心中穏やかでいられるほど、僕は良い人を気取ってはいない。
「まだ何か足りないのもう死にたいんだけど」
「やさぐれてんな。……あーあ、なんかこれもマジっぽいな。……いや、これは決して、親友が既知の外に仲間入りしてしまったわけじゃない。妄想で想像で創作なんだ。或いは本物の並行世界の実証例で……」
ブツブツと、額を指で押さえながらしかめっ面で失礼なことを呟く荒井くん。
ひとしきり愚痴をこぼしてから、「よし」と自分に発破をかけるようにしてから、顔を上げる。
取ってつけたような無表情が、そこには張り付いていた。
「――じゃあ、改めて、俺の知ってる拓郎について話すぞ」
「うん」
「簡単に言えば、お前の認識をそのままあべこべにすればいい」
「あべこべとな」
「だからさ」
要領を得ない僕の態度に、心底うんざりといった感情を隠そうともせず、荒井くんは吐き捨てるようにして語りだす。
「絶世の美男子。居眠りしてる時の寝顔があまりにも美しすぎて、教師ですら起こすのを躊躇する。付いたあだ名は"春眠暁の眠り彦"。全校女子の憧れの的で、電車内で隣り合わせになろうものなら、女
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