反転した世界にて4
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「よかろう」
「なんで偉そうなのかわからないけど。決まりだな、待たせちゃったお詫びに、飲み物くらいなら奢るよ」
「最高」
一瞬、荒井くんが天使に見えた。
けどそれは、横顔を流し見したときに、ツインテールだけが目に映る錯覚だった。僕ほどじゃないけれど、ブサイクはブサイクだ。
でも奢ってもらえるのは嬉しい。
「じゃ、行こうぜ」
「うん」
◇
やってきました。喫茶店。
――またの名を"ケーキバイキング"
いやー、内装が明るいですねー。栗色の彩が眩しいです。メニューですか。ケーキしかないんですか。マロンフェア? あぁ、秋ですからね。
なんていうかこう。物凄く場違いな感じがビンビン来てます。
なんたってもう、右も見ても左も見ても……男ばかり。
むさくるしい。
男共がケーキやパフェを抱えながら、実に幸せそうに舌鼓を打っている姿は、もうなんかもう、世紀末。
「拓郎はコーヒーだけ?」
「うん。もうお腹一杯なんだ」
僕の正面、一枚の皿を埋め尽くすようにして、様々な種類のケーキを持ってきた荒井くん。
ツインテールのブサイク男子が、山盛りのケーキにパクついている姿は、何か悪い夢でも見ているかのような気分になる。
正直、見てるだけで胸焼け起こしそうです。
「んで、話って?」
「うん。食べながらでいいから。聞いてくれると嬉しい。……何から話そうかな」
――僕は今朝からいま現在に至るまでに起きた、様々な変化と出来事を。
そして、それに対して僕自身が感じた違和感――元の世界との違いを、細かく言葉で説明した。
ただし痴漢に遭ったことは省略。今思うと、あれも男女の役割が入れ替わっていたのだとしたらまあ、不思議なことではない。向こうは僕の顔を見ていなかったのかもしれないし。ざまぁ。
女子が必死になってコスプレ喫茶を強行しようとしていたこと――、それは去年、男子がやっていたことだ。
男なのに、ノーブラであるからと言って怒られたこと――、男にブラを着ける習慣はない。
白上さんの話もした――、彼女は僕を知っていたけれど、僕は彼女のことを今日まで名前も顔すら知らなかった。
――付け加えるならば、僕と荒井くんなんかの輪に混ざろうとしていたことも、大きな謎と言えば謎だけど。話がややこしくなりそうなので省略。
重要なのは、白上さんを含めた、クラスメイトたちの妙な親しさだ――、僕はクラスでも浮いて煙たがられていた存在なのだから。
「……――っていう、ことなんだけど」
「……」
口をモゴモゴと動かしながらも、荒井くんは僕の話に口を挟むことなく、ただ黙って静かに聴いてくれていた。
……常にデザートを口に運んでいたから、そもそも口出しが出来なかっただけ
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