暁 〜小説投稿サイト〜
男女美醜の反転した世界にて
反転した世界にて4
[12/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
スケベとは無縁の存在なのだけど、それでも、あんなお姉さんが居たら僕はもう……。
 僕の人生はもっと充実していたかもしれない。などと考えてしまう。男の子ですから。
 ――そんな別嬪さんが、僕ほどではないけどかなり残念な容姿の男性と、相席しているのが見て取れた。とても楽しそうに会話をしている様子から見て、偶然の相席ではないだろう。

「えらく綺麗な女の人が、人生を損してそうな男の人とケーキを食べてるね」
「綺麗な女の人、ね。……はは、雰囲気を見るに、多分デリ(・・)とかだろうな。幾ら払ったんだろ」
「ああ、確かにそんな感じするかも……」
「ふ、はは、断言してやるよ。お前の想像とは真逆の状況だよアレは。くはははっ、こりゃ傑作だ」
「な、何が面白いのさ」

 僕の反応が心底面白いのだろう。
 荒井くんは僕の顔を見ながら、くつくつと腹を押さえてせせら笑う。
 そんな態度に、苛立ちを覚えなかったと言えば嘘になる。けれどそれ以上に、荒井くんの至った結論が気になってしょうがない。

「ひひひ、ははっ、これが笑わずにいられるかよ。創作だとしたら大爆笑間違いなし、マジだとしたら、もっととんでもないことだよ、これは」
「じ、焦らすなよう……」

 ――正直なことを言えば。
 荒井くんの推論を待つまでもなく、僕の中でも一つのある推測(・・・・・)が成り立っていた。
 けれどそれを認めるということは、僕の妄想以上に、僕の想像より更に斜め上に向かって、僕にとって都合の良い世界(・・・・・・・・・・・・)であることを、認めることと同義なのだけど。

「慌てなくても教えてやるともさ。なに、簡単なこと。逆転してるのは、男女の価値観だけじゃない。"美醜の価値観"まで、反転してるってことだ」
「……」

 荒井くんの裁決はしかし、簡潔にして完璧に、僕の想像と全く同じ結論だった。
 
「ここに、スマートフォンがある」
「……新機種だ」

 この期に及んで、僕が納得していないのを悟ったのだろうか。
 何やら憑き物の落ちた聖者のような表情で以て、荒井くんはポケットから携帯電話を取り出して、捜査を始めた。

「これな。僕の好きなスマホ用の腐男性向け18禁ゲームでな。いわゆる百合ゲー。GLゲーとも言うのな」
「百合に、GLゲーとな?」
「そうさ。……うん。やっぱり啓子ちゃんはいいなぁ。時代は和美×啓子だよね。――は、置いといて。とりあえずコイツを見てくれ、どう思う?」

 数瞬、画面に向かって荒井くんは微笑むと、スマホを僕の方に向けてテーブルに置いた。
 促されるままに、僕は目の前の液晶画面を覗き込む。
 するとそこには、

「す……相撲!?」

 回し……ではなくパンツ一丁の相撲取りのような肉だるま二人(性別不明)
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ