反転した世界にて4
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スケベとは無縁の存在なのだけど、それでも、あんなお姉さんが居たら僕はもう……。
僕の人生はもっと充実していたかもしれない。などと考えてしまう。男の子ですから。
――そんな別嬪さんが、僕ほどではないけどかなり残念な容姿の男性と、相席しているのが見て取れた。とても楽しそうに会話をしている様子から見て、偶然の相席ではないだろう。
「えらく綺麗な女の人が、人生を損してそうな男の人とケーキを食べてるね」
「綺麗な女の人、ね。……はは、雰囲気を見るに、多分デリとかだろうな。幾ら払ったんだろ」
「ああ、確かにそんな感じするかも……」
「ふ、はは、断言してやるよ。お前の想像とは真逆の状況だよアレは。くはははっ、こりゃ傑作だ」
「な、何が面白いのさ」
僕の反応が心底面白いのだろう。
荒井くんは僕の顔を見ながら、くつくつと腹を押さえてせせら笑う。
そんな態度に、苛立ちを覚えなかったと言えば嘘になる。けれどそれ以上に、荒井くんの至った結論が気になってしょうがない。
「ひひひ、ははっ、これが笑わずにいられるかよ。創作だとしたら大爆笑間違いなし、マジだとしたら、もっととんでもないことだよ、これは」
「じ、焦らすなよう……」
――正直なことを言えば。
荒井くんの推論を待つまでもなく、僕の中でも一つのある推測が成り立っていた。
けれどそれを認めるということは、僕の妄想以上に、僕の想像より更に斜め上に向かって、僕にとって都合の良い世界であることを、認めることと同義なのだけど。
「慌てなくても教えてやるともさ。なに、簡単なこと。逆転してるのは、男女の価値観だけじゃない。"美醜の価値観"まで、反転してるってことだ」
「……」
荒井くんの裁決はしかし、簡潔にして完璧に、僕の想像と全く同じ結論だった。
「ここに、スマートフォンがある」
「……新機種だ」
この期に及んで、僕が納得していないのを悟ったのだろうか。
何やら憑き物の落ちた聖者のような表情で以て、荒井くんはポケットから携帯電話を取り出して、捜査を始めた。
「これな。僕の好きなスマホ用の腐男性向け18禁ゲームでな。いわゆる百合ゲー。GLゲーとも言うのな」
「百合に、GLゲーとな?」
「そうさ。……うん。やっぱり啓子ちゃんはいいなぁ。時代は和美×啓子だよね。――は、置いといて。とりあえずコイツを見てくれ、どう思う?」
数瞬、画面に向かって荒井くんは微笑むと、スマホを僕の方に向けてテーブルに置いた。
促されるままに、僕は目の前の液晶画面を覗き込む。
するとそこには、
「す……相撲!?」
回し……ではなくパンツ一丁の相撲取りのような肉だるま二人(性別不明)
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