反転した世界にて3
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クラスの集中砲火に、あからさまにオロオロと狼狽えだす白上さん。どうせ無実なのだから、堂々としていればいいのに。
「ご、誤解よ……。っていうか、あんたら、なんでいきなり私たちの会話に割り込んでるのよ」
「白上が変なこと言って、赤沢さんが困ってるじゃないの。助けてあげたの」
「本音は?」
「白上だけ男の子と仲良くしてずるい。そこから引き摺り下ろしてやる」
「最高よあんたたち。そこで混ざろうとするんじゃなくて、道連れにしようとする辺りがもうエクセレント」
一触即発の雰囲気。
気が付けば、離れた席に座っていた女子たちまでもがこちらに注目していた。
――と、急に白上さんは僕の方へと椅子を寄せて、
「あ、赤沢さん、そのお弁当って、もしかして手作り?」
「え? う、うん。そう」
椅子だけを持ってきて、僕の机の上にパンを並べる白上さん。
距離が近い。僕の肩と白上さんの肩が、三十センチと離れていない。シャンプーか何か、花のような香りがふわりと僕の鼻腔をくすぐるのがわかる――それくらいの距離感だ。
『あ、分が悪いとみて強引に話題変えやがったわ』
『くそ、やられた。私たちの会話が一気にモブ化してるじゃないの』
『こんな高等技術を……、見て、もう私たちの会話、赤沢さんに聞こえてないわよ』
ざわめきが遠くなる。僕の耳には、もはや白上さんの声しか聞こえていない。
「へー、すごいね。もしかして、夕飯とかも全部自分で作ってるとか?」
「ま、まあね」
「いいなぁ、家庭的な男の子って。憧れるわ」
「あ、ありがとう」
――今日この時ほど、自分のコミュ症を恨めしく思ったことはない。
せっかく笑顔で、しかも二人だけの空間で話しかけてくれているというのに、気のないような返事しかできないなんて。
『どう思う?』
『明らかに引いてるだろ赤沢さん。でもあいつ空気読めないからなぁ』
『まあ、あのアグレッシブさだけは認めてやらないこともないけどね』
「あーあ、誰か私の弁当作ってくれないかなぁ」
「う……?」
「っていうか、赤沢さんの手作りお弁当が食べたいな〜」
「……」
ちらっと、こちらの様子を窺うようにして流し目を送ってくる白上さん。
先ほどの荒井くんのそれとは、破壊力が段違いだ。
『あの馬鹿は、なんで急にお弁当を無心してるわけ?』
『駆け引きってもんを知らないのね、これだからもやし女は。脳みそにまで水しか詰まってないのよ』
『なんでああも暴走するのかねぇ』
外野がなにか言っているが、全く聞こえない。ただただ、白神さんの瞳に魅入られる。
うぉお。白上さんみたいな絶世の美少女に、そんな子犬が捨てられたような視線で見つめられたら……。
「べ、別にいいけど……
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