反転した世界にて3
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今朝からの異常の一つとして数えられよう。
「うへへ……男の子と、ランチタイム♪」
「うへへだって。気持ち悪いなぁ」
「む〜……」
確かに、「うへへ」はどうかと思うけれど。しかし、気持ち悪いは言い過ぎだと思う。
実においしそうな顔で焼きそばパンを頬張る白上さんは、まるで地上に舞い降りた天使の如く可憐で美しい。小さな口で頬一杯にパンを齧るその姿は、リスなどの小動物を連想させる。超かわいい。
「ムグムグ、ほういえばさ」
「飲み込んでから話せよ」
「んぐ、ゴクン。――そういえばさ、赤沢さん、三、四限目に出席してなかったみたいだけど、何かあったの?」
「おう、コイツ、体育の時間急に鼻血出して倒れやがってさ。熱中症って話だけど……」
「えぇ!? 大丈夫だったの!?」
「や、うん。全然。何も問題はなかったヨ」
熱中症とか嘘八百だけどね。
しかしだからと言って、ホントは突然上着を脱ぎだした白上さんのトップレス姿に欲情して――、などとは口が裂けても言えない。
今だってこんなに近くに白上さんがいて、あの光景を思い出して噴出してしまいそうなのを必死で堪えているのだけど。そんな気配は微塵も悟らせない。ポーカーフェイスはぼっちの基本だ。
「大丈夫ならいいけど。もし調子悪かったら、私に言いなさいよ。担いででも保健室に連れてってあげるから」
「おい拓郎、また倒れるのはいいけど、絶対に白上にだけは頼るなよ。お前だって童貞は大事だろ」
「き、貴様――ッ」
僕が童貞だと何故知っている!?
いや、百歩譲ってそれはいいとして、それを白上さんの目の前で発言するのは一体どういう了見だ!?
「な、なにを言うのよ荒井さん! 淑女の中の淑女と呼ばれるこの私が、そんな不埒な真似を致すはずがないでしょう!」
僕が文句を言おうとしたのに被せて、白上さんが大声を張り上げる。
――しかし、そうだ。白上さんの意見はもっともだ。何故荒井くんみたいな不細工に、白上さんのような美少女がそんなあられもない言いがかりをつけられなければいけないのか。
此処は白上さんがブチ切れるシーンであって、僕が童貞を暴露されて怒る場面ではない。
「いや、白上だし」
「そうだそうだ。お前、前に、『座右の銘は、"据え膳食わずば女じゃない"です』って言ってたじゃん」
「いつも男子の着替え覗いてるし」
「貸したエロ本湿らせて返してくるし」
「えっ、そんなことしてんの、白上って。うわぁ……」
「っていうか、エロ本貸した女子、お前、自爆だろ」
「自爆だけど、白上を道連れにできるなら本望よ」
「おぉ、女らしい。こっち近づくなよな」
――突然、周りで僕たちの会話に聞き耳を立てていたのであろうクラスメイト達まで同調しだす。
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