反転した世界にて3
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れより――、代わりのブラなんて、誰も持ってないよな……、あーもう」
騒いでいる僕たちの方を、男子たちはちらちらと気にしながらも、体操着に着替えていく。
――皆、総じてブラを着装していた。
「あ、あれ……、なんでみんなブラを着けてるの?」
「いやいや、当たり前だろうに。」
「あ、当たり前? 僕の知ってる当たり前と、違う……」
いつの間にそんなハイセンスな常識がトレンディになったというんだ? 男の僕たちがブラなんか着けていったい何の意味があって、それで誰が得をするというのか。
最近の若者が考えることはわからない。
「荒井くんも着けてるの?」
「はぁ!? 当たり前だろうが!! ってうわ、覗き込むなよ馬鹿拓郎!」
荒井くんのTシャツを引っ張って中を覗き込んでみると、なるほど確かに。黄色いリボンと同じ色の可愛らしいブラジャーを装着してる。
――これが、未来に生きるということなのかもしれない。時代はいつだって新しい風が吹き荒れているのだ。
僕のように古い人間は、取り残されていく。振り落とされたくなければ、彼ら未来人たちの後ろを金魚の糞のように付いていくしかない……。
「い、いえ。なんでもないんです荒井さん。ナマ言って、すみませんでした。明日からは、ちゃんと着けてきますんで、はい、許してください」
「なんで急に卑屈になってるわけ?」
◇
「お、おい。B組の赤沢さん」
「冗談……でしょ」
「あの体操着たった一枚を隔てて、その向こうに……、ゴクリ」
ざわざわと。
なにやら凄まじい視線を感じる。
特に女子の目線ヤバい。親の仇でも睨むかのように鋭い眼光で射抜かれている。
常日頃溜まっていった鬱憤が、今日ついに爆発してしまったとでもいうのか。明日からは僕、登校拒否になってしまうかもしれない。
縮こまっている僕の肩を叩きながら、荒井くんは言う。
「ほら、言わんこっちゃない」
「ぐむむむ……」
なにが言わんこっちゃない、のやら。皆まで言ってくれないと何が何やら全く分からないんだけど。
まさか、ブラを着けてこなかったからってこんなに注目されるなんて。大体家に男用のブラなんかあるわけないんだから、今日買って来なきゃならないんだけど。
「――集合! チャイム鳴ってるわよ! さっさと並びなさい!」
授業開始のチャイムが鳴って、先生の号令に従い、男子と女子で別れて整列する。
僕は背が低いので最前列だ。
先生は僕の方を見るなり、露骨に視線を逸らしながら、何事かを言いよどむ。
「あ、あ〜。赤沢……その」
「その……。ブラを忘れてしまったみたいで。今までこんなことなかったんですけど、なんかすみません」
「そ、そうか。それは困った
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