prologue
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ーー終わりを迎えた世界で、俺はただ一人で立っていた。
ーー他に人影はない。いや、虫や動物、植物すら存在しない。
ーーこの世界は、とあるロストロギアと一人の人物によって破壊させられてしまった。
ーー世界の時は止まった。風も吹かず、水滴も落ちずにそのまま停止している。空は灰色で……いや、世界全てが、黒と灰色だけに彩られていた。
ーーそんな世界で、俺はただ一人。知っている人はみな戦火に呑まれてその命を散らしていった。中には、俺を庇って死んだ人もいた。
ーー悲しい。憎い。寂しい。辛い。そんな感情が濁流となって俺の心を飲み込んでいく。
ーー愛した人達は死んだ。大好きだった人達も死んだ。守るべき人達も死んだ。なにもないこの世界で、俺は生きる意味があるのだろうか。
ーーそんなもの、あるはずがない。なにもない世界で、生きる意味など、あるはずもない。
「……ディーネ………」
『マスター?』
俺の長年の相棒のデバイスは、心配するような声音で問い返してきた。
「みんな、死んじまったなぁ……なのはさんも、フェイトさんも、はやてさんも、ティアナも、スバルも、エリオも、キャロも……みんな…」
『……はい』
「ユラも、死んじまったな……絶対に守るって言ったのに……」
ーー言葉と共に思い出すのは、目の前で大切な人達が徐々に冷たくなっていく光景。いくら治癒魔法をかけても、いくら祈ろうとも、誰一人として助けられなかった。無力感と後悔に、俺は歯を食い縛って手を握り力を込めた。
『マスター、血が……』
ーーディーネに言われて気づく。俺の体の至る所の血管が破裂して、血が吹き出していた。今まで何度も経験してきたリアルな死の感覚が、ゆっくりと迫ってくる。だが、
「構わないさ。元々、俺がこの世界で生きている意味なんてないんだからさ」
『マスター……そんなこと、言わないでください…!』
ーーごめんなディーネ。けどさ、もうどうにもならないんだよ。誰もいないこの世界で、人の温もりがないこの世界で、俺は生きていることなどできないよ。
「ああ……できることなら、やり直したいなぁ……」
『マスター…私は、ずっと貴方について行きますよ。例え、時を渡ろうとも』
「……ありがとう」
ーーさあ、終わろうか
ーー新暦75年。後世の歴史家が語るに、この世界の人間の歴史は、一度ここで断絶したらしいーー
なにもない真っ白な空間。そこにあるのは、揺蕩ういくつもの光芒と、光芒が作る輪の中心に寝かされた、青い髪を持つ最後の少年だった。
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