第九章
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第九章
「さて、後は」
「大詰めね」
こんなことを話しながら着替える。そのうえでまた動くのであった。
リゼッタが出て来るとだった。皇帝は彼女を見てうっとりとなって言うのであった。
「素晴らしい」
「可愛い娘ですよね」
ブオナフェーデも機嫌よく自分の女中を紹介する。
「しかも利発でよく気が利いてですね」
「そうなのですか」
「はい、いい娘ですよ」
こう言って勧めるのであった。
「是非ですね」
「わかりました。それではです」
「どうぞ陛下の皇后に」
「けれど私は」
リゼッタは彼等の話に畏まった顔になる。とはいってもチェッコと同じで芝居である。
「その様な栄誉には」
「いえ、貴女でなければです」
しかしチェッコはここで言うのであった。
「貴女でなければなりません」
「私でなければですか」
「どうか是非」
「御父様」
「こちらにいらしたのですね」
ここで娘達も出て来たのであった。見れば妖精の化粧が微かに残っているがブオナフェーデはそのことに全く気付いてはいなかった。
「ここは月の世界だっていうけれど」
「本当なの?それは」
「うむ、まことじゃ」
こう娘達に話すブオナフェーデだった。
「その月の世界じゃよ、ここは」
「お使いの人に呼ばれて来たけれど」
「ここがそうなのね」
「そうじゃ。いい場所じゃろう?」
優しい顔で娘達に述べるのであった。
「ここはのう」
「ええ、確かに」
「何て奇麗な」
「さて、貴女は私の妻です」
皇帝として再びリゼッタに話す。
「そしてです。貴女達は」
「私達はといいますと」
「どうされたのですか?」
「これこれ、礼儀正しくのう」
ブオナフェーデはここで娘達に話した。
「この方はこの月の世界の皇帝陛下じゃからのう」
「えっ、そうなのですか」
「その様に尊い方だったのですか」
「そうなのじゃよ」
娘達の驚いた様な演技にも気付かないのであった。
「実はのう」
「何てことなの」
「その様な方が私達の前に」
「だから礼儀正しくのう」
しっかりとしているが優しい声であった。目も同じだ。
「よいな」
「はい、わかりました」
「はじめまして、陛下」
「クラリーチェです」
「フラミーニアです」
「ようこそ月の世界に」
チェッコは相変わらず皇帝になりきっている。そのうえで自分の前で一礼した二人に応える。
「そしてです」
「そして?」
「何かあるのですか?」
「私は今妻を得て幸福の中にあります」
さりげなくリゼッタを己の横に置いている。もう完全に夫婦になったつもりの二人だった。
「そしてです。貴女達もです」
「私達もといいますと」
「まさか」
「そうです。貴女達も幸せになって下さい」
こ
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