ALO編
episode3 現実との戦い4
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そもそも勘当っておい、勘当だよな!?
出ていけって意味だよな!?
「感動した」の言い間違いとかじゃないんだろ!?
言いたいことは山ほどあるが、声にはならない。
声にしようとしたらその瞬間に音以外のものがたっぷり床板にぶちまけられかねん。
「ああ、大丈夫、シー!?」
そんな潰れた芋虫もかくやという状況の俺にかけられる、慌てた声、は、母さんか。
とりあえず大丈夫……と言おう(強がりだ、全然大丈夫じゃない)と思ったのだが、込み上げる苦しみがそれすら許してくれない。仕方なく右手をヒラヒラさせ、意識はあることを示す。そんな俺の背中に触れる手が、二人分。母さん……と、牡丹さんか。意外だな。爺さんのほうについていったと思っていた。
「朱春様。蒼夜様をお呼びして参ります。五分ほどで戻りますので、しばらくの間、御主人様をお願いします」
「分かったわ、急いでお願い!」
冷静な牡丹さんと違い、母さんの声はもう涙声だ。
思えば、母さんは俺がこっちに戻ってきてからは泣きっぱなし……いや、泣かせっぱなしだ。以前は俺の前では絶対に泣かない人だったのに。それは俺がこっちに戻ってきたせいか。それとも、母さんがこの
家に戻ってきたせいか。或いは、両方か。
「ごめ……、勝てん、うっぷ、……かった……」
「いいの、いいのよ、そんな事! すぐに蒼夜お姉さまが来るから、しっかりして、喋らないで待ってなさい!」
「……いや、もう、大丈夫。大丈夫……っうっぷ!」
くの字の体制はまずいと判断して、ごろりと横倒れに寝転がって大の字になる。纏わりつく汗が、張り付く服が向こうの世界と違う感覚を伝えてくる(正直ありがたくはないが)。だが、そう言えばあの世界でもこんな風に疲れ果てて転がったこともあったな。
動いた拍子に喉に酸味が走り、顔を歪める。同時に歪んだ視界に、どアップに映ったのは、母さんの顔。溜まった涙を零させまいと、根性で痛みを抑えて笑顔を作る。ド根性。やせ我慢がバレバレだったが、誤魔化せたのか或いはやせ我慢が出来るくらいの怪我だと分かったのか、母さんもほっとしたように泣き笑いの表情を作る。
それを見届けて、そこで俺の精神的疲労も限界に達したらしく、意識が遠のいていく。こればっかりは、向こうでもこっちでも同じだな。なんか変な病気とかじゃないだろうな、コレ。
気を失う直前、最後に聞こえたのは。
「……シーも、もう十九だものね……父さんに、そっくりだったのよ。お父様に面と向かって私をくださいって言って、立ち合って。……構えも、瓜二つで母さん驚いたわ。しっかりと、あの人の血を受け継いでるのね……違うのは、……」
ギリギリで、ここまでだった。
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