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八条学園怪異譚
第二十六話 植物園その六

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 青い菖蒲に紫の菫、そして白の百合達を見て今度は愛実が言った。
「落ち着くわよね」
「うん、水辺のお花ってね」
「独特の趣があるからね」
 愛実は目を微笑まさせて聖花に話した。
「凄くね」
「そうよね、こうした場所で誰かとお弁当を食べたら」
「誰かって?」
「彼氏というか旦那様とか」
 つまり生涯の伴侶とだというのだ。
「そういうのいいじゃない?」
「そうね、確かにね」
 愛実も聖花のその言葉に頷く、そしてこうも言うのだった。
「こういう場所に二人で一緒に座ってね」
「いいでしょ」
「ええ、ただ湖を見てたら」
 愛実はその実際には池と言っていいそれを見て述べた。
「河童さんかキジムナーさん出そうだけれど」
「ここにもいるかしら」
「いてもおかしくないでしょ」
 こう聖花に言うのだった、暗がりだが次第に目が慣れてきて見えてきている池は静かな水面を見せているがそこにだというのだ。
「学園の中だし」
「言われてみれば。いるかしら」
「ああ、今日はいないよ」
 送り犬が実際に池に近寄って確かめようとした二人に足元から言った。
「そこにはね」
「あっ、いないの」
「そうなのね」
「うん、ここも河童さん達の遊び場だけれどね」
 それでいることも多いがというのだ。
「今日はいないから」
「キジムナーさんもなの?」
「あの人達はまずガジュマルの木にいるから」
 このことが大事だった。
「だからね」
「あっ、ここにはガジュマルの木ないわね」
「この植物園の中にもあるけれどね」
 ガジュマルの木自体はだというのだ。
「ただこの温室の中にはないから」
「別の温室?」
「そこにあるけれどね」
「今はいないのね」
「そう、いないよ」
 そうだというのだ。
「今日は外で遊んでるよ」
「じゃあ今は」
「どちらもこの植物園の中にはいないよ」
 送り犬は愛実、そして聖花に話した。
「ただ別の人達がいるけれどね」
「別の人達っていうと?」
「その花の精霊さん達に」
 今回会うその彼等だった、まずは。
「コロポックルの人達もいるよ」
「あの北海道の?」
「そう、小さな妖精さん達がね」
 いるとだ、送り犬は聖花に話した。
「来ているよ」
「この学校コロポックルもいたの」
「いるよ、だってここ日本だから」
 だからだというのだ。
「普通にね」
「普通って」
「北海道も日本だし北海道からこの学園に来てる人もいるしね」 
「それでなの」
「後北海道の動物や植物も連れて来られてるしね」
 この事情もあった。
「普通にいるよ」
「そうだったのね」
「そうそう、普通にいるから」
 こう話すのだった。
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