第七章
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第七章
「赤に黄色に白に」
「宜しいですね」
「チューリップも」
「わしはチューリップが大好きなのじゃ」
彼はそのチューリップを見てその小さな目をさらに細ませる。
「わしの庭にも随分咲かせておるのじゃよ」
「はい、では心ゆくまで御覧になって下さい」
「どうか」
「いいのう。本当にいいのう」
彼は妖精とお菓子、それに花に囲まれ満面の笑顔であった。しかしそんな彼を離れた場所で見ている面々がいた。その彼等は。
「上手くいっているね」
「うん」
エルネストとエックリーティコだった。二人は今妖精達と花々に囲まれているブオナフェーデを物陰から見ながら笑顔になっていた。
「ブオナフェーデさんいい具合に信じてるよ」
「本当はただの自分の家の庭なのにね」
「気付かないのかな」
ここでこう言ったのはチェッコだった。彼もそこにいるのである。
「自分の庭なのに」
「何、大丈夫だよ」
だがエックリーティコはにこやかに笑ってこう彼に返すのだった。
「それはね」
「大丈夫ですか」
「御覧よ、完全に信じてるじゃないか」
相変わらず御満悦な感じのブオナフェーデを指差しながらの言葉だった。
「今もね」
「そういえばそうですけれど」
「安心していいよ」
また言うのであった。
「このままね」
「だといいんですけれどね」
「さて、いい調子だ」
また言うエックリーティコだった。
「このままいけるよ」
「じゃあ僕も」
「うん、用意しておいてくれ」
今度はこう彼に告げた。
「そろそろ出番だからね」
「わかりました。それじゃあ」
チェッコは彼の言葉を受けてすぐに後ろに消えた。その間もブオナフェーデは妖精達の接待を笑顔で受けている。彼はその中で言うのだった。
「それにしてもじゃ」
「はい」
「どうしたのですか?」
「いや、娘達がのう」
ここで二人の娘のことを思い出したのである。
「わしだけがここにいてもよくないじゃろ」
「といいますと?」
「娘さん達がですか」
「ナポリに残してきたが大丈夫じゃろうか」
思い出せばそこから心配になっていくのであった。
「果たして」
「大丈夫ですよ」
「娘さん達でしたら」
妖精達はにこやかに笑って彼に応えるのだった。
「楽しくやっていますから」
「全然」
「だといいのじゃがな」
とりあえず安心する老人だったが妖精達はその彼と少し離れ顔を見合わせてひそひそ話をはじめた。
「御父様ったらここでもまた」
「私達のことを言うのね」
実は妖精達の正体は彼女達だった。それで顔を見合わせて話すのだった。
「折角月に出たのに」
「それでも言うなんて」
そのことに戸惑っているうちにやたらと派手な金と銀のみらびやかな服と帽子に身を包ん
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