第五章
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第五章
「私達はもう子供じゃないのよ」
「もう結婚できるのに」
「何を言っておるのじゃ。御前達はわしの大切な娘達じゃ」
しかし彼は全くわかっていなかった。
「ずっとのう」
「ずっとって」
「だから私達は」
「そうじゃ、今度のフラミーニアの誕生日にはじゃ」
右手を拳にして左手の平をぽん、と叩いてみせる。
「特別に作らせたサファイアのブローチとケーキを用意しておくからのう」
「それはいいけれど」
「御父様、フラミーニアももう大人なのよ。レディーだから」
「ははは、わしにとっちゃずっと子供じゃよ」
だが彼はわかっていなかった。それも全くだ。
「だからいいじゃろ。それでのう」
「全く。話を聞いてよ」
「少しだけ」
「聞いておるぞ。しっかりとな」
自分ではそのつもりなのだった。だが実際はこんな有様であった。そんな彼のところにリゼッタが戻って来た。そうしてクールに彼に告げてきた。
「旦那様」
「うむ。何じゃ?」
「エックリーティコさんが来られています」
こう言うのである。見れば確かに目の前にはエックリーティコがいた。にこりと笑ってそのうえでブオナフェーデの前にいるのだった。
「こんにちは」
「おお、こんにちは」
ブオナフェーデはその小さな目をにこりとさせて彼に応えた。その間さりげなくクラリーチェの方を見て右目でウィンクしてみせる。彼女も彼女で彼ににこやかな笑みを返してみせる。だが今ではこのことは内緒にしている、そんな二人なのであった。
「今日もお元気そうで何よりですのう」
「いやいや、朝早くはこたえますよ」
エックリーティコはにこやかに笑って彼に言葉を返した。
「何せ毎晩星を見ていますから」
「天文学者も大変ですな」
「ですがそうして星を見ているのがこれまた楽しいのです」
自分ではこう言うのであった。
「いや、これがですね」
「左様ですか」
「はい。それでですね」
ここでエックリーティコは懐から取り出した。見ればそれは。
「おや、それは」
「お薬です」
その小さな黒い瓶を見せての言葉である。
「これを飲まれますとです」
「どうなるのですか?」
「身体が軽くなって月の世界に行けるようになるのです」
「あの夢の世界にですか」
「そうです。今日は是非飲んで頂きたく参上したのです」
「わかりました。それでは早速」
エックリーティコの言葉を受けて早速薬を受け取るブオナフェーデが応えた。そうしてそのうえで早速薬を飲んでしまうのだった。
のむと早速彼の身体が軽くなったかというとそうではなかった。ばったりと倒れてそのうえで眠り込んでしまったのだった。
「これでよし」
「あの、エックリーティコさん」
「ちょっと」
娘達は倒れてしまった父を見てそっとエッ
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