夢心地は人心地
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「あっそ。でも、そんな眼鏡でも、いなくなったら誰が作戦を考えるのよ。言っとくけど、私はあの馬鹿副長の考えた作戦なんかで命を懸けたくないわよ」
「恐らく作戦はぶった斬れオンリーな気がするからねぇ……」
ふぅ、と思わず同時に溜息をついてしまうが、気を取り直す。
「でも、真面目に考えてくれるなら、案外、考えてくれるかもしれないよ?」
「歴史再現無視する可能性がありそうな案外ね……それでも、作戦立案の能はあんたの専売特許でしょ」
「別に僕だけの能ってわけじゃないんだけどね……」
そう言い合っているうちにネシンバラが、また通神帯で新しいネタを見つけたのか、表示枠のほうに一瞬だけ視線を向けて、ああ、と頷く。
「何よ」
「いや───やっぱり、こう思われるよなぁって思って。昔に僕も言ったことがあるし」
それは
「僕が考えた風にやっていれば上手くいったのにって。思うよね、これ」
よくある事よねと同意する。
「私の本でも似たようなことはあるわよ。目の前で広げて、そんな事をいきなり言われて、買わずに去っていくなんて普通にあるわ」
「それで?」
「───別に。やろうと思えばできることを言われても響かないわ。何よその顔」
引くとは失礼な眼鏡である。
ネタにするのは何時がいいかしらと内心でスケジュールを作ろうと思ったが、未だに総長、副長ネタの本のメモの内容が消化できていないのである。
あの二人は、こちらのネタの都合を読んでから、再びネタを生み出せというのだ。
まぁ、目の前の眼鏡も少し、テンションが上がったようなので、こっちも楽になれるというものだろう。
「あんたも祭りに出れば、無理矢理テンション上がったでしょうに。何で参加しなかったの?」
「それは簡単だ───今の僕は呪われているからね。呪われた勇者とかならともかく呪われた軍師ってのは珍しいんじゃないかな?」
ああ、そういえばそうだったわね、とネシンバラの右手を見る。
右手には術式書き込み有の包帯を巻いているが、中にあるものを隠すことが出来ないままでいる。
包帯から滲み出た文字列───マクベスである。
「王位の簒奪者の呪い……これ程、中から壊すか、弱体化させるのに効率がいい呪いはないでしょうね。どう? 主役になった気分は?」
「それが、悲劇じゃなかったら感動する余地があるんだけどね」
「悲劇も喜劇も一緒だとは思うけどね───最後には色んな意味で笑いたくなるでしょうから。ま、気にする事はないでしょ。総長も、他の誰も何も言わないって事は問題ないって事だわ。そのぐらいは理解できているでしょ」
「魔女は、自分が理解していることは周りも理解しているみたいな事を言うね」
否定しない男
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