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不可能男との約束
夢心地は人心地
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ことだ───でも、過去に出来るので大丈夫だろう。
次に出会った時にぶった斬ればいいかと思っていると、こちらを見ていた長衣の人影が、こちらに対して、一人一人に礼をし始めた。
礼をされたら礼をし直すのが、最低限の礼儀である為に、それぞれ頭を下げつつ、しかし、点蔵の方に視線を向けると

「……あん?」

点蔵にのみだけは頭を下げる速度が異様に早く、そして、そのまま背を向けて去って行った。



しまったと"傷有り"は自分のした行動に判断を付けた。
どう見ても、自分が今してしまった事は、武蔵の忍者にいい印象を与えないどころか、相手によって態度を変える人間と思われるだろう。
ましてや、相手は今は停戦状態にいるとはいえ一応、英国とは敵対関係にあるのだ。
しまった、と再び思うし、何をしているんだと自問自答してしまう。
どうして、こうなったかという理由ならば、今も覚えているし、忘れるつもりはない。
あの武蔵の輸送艦が、落ちていく最中、自分の目は落ちていく先に、子供達が恐怖で震え、動けなくなっている姿を見た。
故に、自分は動いた。
方法は簡単である。自分の術式で輸送艦を攻撃して、軌道をずらす。
できないと思わない能力があるので、それをただ、しようとしていた。輸送艦はさらに振り回されるだろうが、こっちにも都合がある。
だから、しようとした。
そこで

「危のう御座る!」

空から忍者が落ちてきた。
一瞬、この説明をすると、ちょっとおかしくないかと思ったが、事実なので仕方がない。
そして、もう残り、数秒とかからずに発射できたはずの術式は突然の襲来に対応できず、結果

「───」

言わなくても解る結果になった。
違う。言語化して、理解したくない結果になってしまったのだ。
呆然自失。
自分を失う怒りは、失ったものと、自分の後悔の質によって増大する。
助けることが不可能であったのならば、今の自分はただの自惚れによる自室であるといえるかもしれない。
しかし、自分は助ける能力とタイミングがあったのである。
故にこれはいけない。
だからこそ

「大丈夫で御座るか?」

そう、こちらの身を案じる忍者の問いを黙殺し、手を振った。
子気味が良い音がしたと思う。
思わず、笑みを浮かべてしまったのではないかと思うほどであった。そして、同時に浅ましい自分だと思いながら、自身の感情を抑制することが出来ずに

「何てことをしてくれたんだ……!」

酷い言い掛かりだったと今なら思えるくらい、あの時は感情がごっちゃごちゃになっていたのだろうと思う。
武蔵の忍者が何を思って行動したのかは、今でも解らないが、少なくとも最初の一声から、こちらを案じての行動だということは確かだと思う。
それを前に何てことをしてくれたんだ
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