夢心地は人心地
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意味もないのだが、少し、現実逃避することで、何とか冷静になれたので深呼吸一つで雑念をけし、意を決して手紙を握り、引っ張ろうとして
「……ぬ?」
抜けない。
理由は単純で、つまり圧が高い。落ち着くんだ自分。ここで、今、余計な単語や脳の活性は無駄であるし、罪なのだ。単純に仮定して、浅く見ても彼女が起きてこれを見たらセクハラで火刑だ。恐らく、歴史上最低最悪の罪による火刑だ。余計な歴史再現を生み出してしまった自分は恐らく末代の恥というか、自分が末代になるのでつまり、自分一人で済むのでって前向きに思考する向きが違うって!
とりあえず、もう少し、頑張って力を入れて抜こうとしたとき───再び、ドアが開く音がする。
「ふんぐ……!」
思わず、ヤバイと何か思考して力加減をミスってしまう。
しかも、方向は後ろではなく、前に。
そうなると、必然的に手が動く方向は胸の方に向かい
「失礼、総長。あの後、熟考したのですが、総長のような真面目な大人がフアナ様みたいな真面目女教師系の年下の生徒にその───」
腕が左右から肉に包まれる感触を得ながら、脂汗が大量に流れるのを知覚し、しかし、理性が先制を取らなきゃ不味いことになると理解し
「ぎ、ァ君!? こ、これはね───」
「Tes.───そういうことにしましょう」
「て、展開早! もう少し、熟考して!」
まぁまぁ、と再び制され
「フアナ様もこんな総長の事を気にして、頑張っていられますし、それにしても───」
一息
「まさか、総長がフアナ様に寝たふりさせた上で、乳挟み極楽キャバレーごっことは、これ正にダブル快男児。宗茂様にもこういった技が欲しかったです。では、御機嫌よう」
「くっ……! も、もう気にしないぞ! って、帰っちゃ駄目だって!?」
と、ドアの方に向かおうとした時に、体重移動によって腕が勢いよく胸から抜け、それと同時に圧から一瞬解放されたお蔭か、手紙が抜け、もしかしたら緩んでいたのか。彼女の制服の合わせが外れ
「───」
その前に、恐らく人生史上初の最高速度を出して、部屋の隅にある仮眠用の毛布を取り、彼女にかけた。
自分の人生で最高の仕事をしたのではないのだろうかと思い、ようやく一息つけた。
ちょっと、糖分がほしくなったので机の下にある林檎のパイを一つ拝借し
「……お」
以前より甘くなっている。
病院に持っていき、子供が食べるとなればどういうものが好かれるということを理解しているからこその甘味であることに気づき、また思う。
……どうして、これだけ出来て、学習も怠らずに成長する人が僕の下にいるのだろう……?
今までに何度も思った疑問だが、結局、それを問う事も、答えが出る事もなかった
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