夢心地は人心地
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っと自由で、今よりも断然に自分らしく動けただろうに、と。
「って、そんなのは僕が言える立場じゃないか……」
思わず、小声で呟き自嘲する。
自分が襲名しているフェリペ・セグンドは三征西班牙の絶頂期の王と共に衰退を示す王の名である。
絶頂の方はともかく、衰退の方は襲名したとき、成程、僕には相応しいなと内心で苦笑した者である。
ある意味で、三征西班牙の国民から恨みと諦めの視線を向けられても仕方がない人物である。
むしろ、その方が気楽だし、彼女もそういう視線を自分に向けてもおかしくないだろうに、未だに彼女は自分を持ち上げようとする。
……年頃の女の子の心境をおじさんの僕が察するのも変な話かな
とりあえず、あんまり女の子の寝顔を見るのは失礼だと思い、ここに来た用事を終わらせようとする。
「手紙……」
レパントにおける自分の唯一の戦果。
何もかもを取りこぼした戦場で、ただ一つ掴む事が出来た命。こんな自分でもと自嘲しか出来ない自分によくやったとそれだけは言える自分の人生での最大の報酬。
長寿族の孤児の子供からのである。
どうやら、他の手紙と一緒に重ねているようで、これらも自分用なのだろうと思う。
「……というかベラスケス君が管理する孤児院にいるんだから、彼が直接持ってきてもいいだろうに……そこら辺が機微が疎いっていう性格じゃないし、女の子的醍醐味なのかな、ねぇ、宗茂───」
何時もの習慣で語ろうとした友人の名に息を詰める。
駄目だなぁ僕、と小さく吐息を吐きながら彼女が持っている手紙をとって、邪魔にならないように帰ろうとする。
そうしていると
「ん……」
神的タイミングで、彼女は身をよじった。
悪い夢でも見ているのかなと思考する前に、よじった結果が目の前に現れる。
よじった動きに合わせて椅子がこちらに向いたのである。そして、その態勢が、自分にとって楽な姿勢だったのか、彼女は肩から力を抜き、抱くように抱えていた手紙を全部落としてしまった。
わわ、と慌てて手紙を拾う作業に入る。
ふぅ、と片膝を曲げて手紙を一枚一枚拾っていると、少しだけ微妙に遠い位置に手紙が落ちてしまったのがある。運の悪いことに椅子の下なので、ちょっと取り辛い。
だから、もう一つの膝も曲げて、その手紙を取ろうと手を伸ばそうとしていると
「……むっ?」
背中に圧を感じる。
どうやら、フアナ君の足が、寝相で自分の背中に乗ってしまったようだ。
とは言っても、目の前で両膝を曲げて、体を伸ばして手紙を取ろうとしているのである。少し、動いたら触れてしまうのは仕方がないと思ったところで
「───あれ?」
今、自分は非常に変なことをしていないだろうか?
落ち着け、フェリペ・セグンド。お前は最高に冴えない男だ。それ
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