44話「武闘大会前日」
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丈夫”って、切れ味はいいのかい?」
「それは二の次だ。とにかく丈夫な剣がほしい。種類はなんでもいいが、できたら長剣の類が嬉しいな」
「でも兄さん、あんたなかなかよさげな武器を持ってるようだが?」
「今回はちょっと訳ありでね。これは使わないことにしてるんだよ」
流石、御目が高いね。ニヤリと笑いながら言うと、店主は照れたように頭を掻いた。
「防具と武器のレベルが伴ってない冒険者なんざなかなかいないが…まあ、うちはちゃんと金払ってくれりゃあそいつが誰でも構わねぇや」
「助かる」
そうして奥から持ってきたのは大した装飾も施されていない長剣。いかにも“質実剛健”といった感じで、僅かに赤みを帯びていた。
「これァ5%くれェだが硬赤銅が混じってあんのよ。聞いたことあるか? アークライト。“軽くて丈夫!”が売りだ」
「いや…初耳だ」
「ふむ。まあ一言で言やぁ、高級金属の1つだよ。
ほら、そこに置いてある鎧に混ぜ込んである断魔鋼と同列っつーわけだ。オリハルコンや魔導銀なら聞いたことくらいあんだろ。有名だからな。これァ性質で言えば、厳剛鉄に近いかな。そっちは知ってるか?」
「ああ、それくらいなら。世界で一番硬い鉱石だろ」
「そうそう。ま、アークライトはそれに比べるとかなり見劣りするが、それでも一般的に武器に使われるような金属よりは硬い。で、話を戻すとだな」
手で鞘の上から剣を叩いた。
「これがそのアークライトがちょびっとだけ混じってるから、全部鉄で作る武器よりも少し軽くなるし、おまけに硬度も上がるっつー代物だ。お値段は5000リールなんだが、まあそこは兄さんの出世払いで返してくれや」
豪快に笑う店主には、好感が持てた。
「悪いな、助かる。この大会が終わったあとには残りの金額も返すよ」
「お、兄さん大会に出るのか! わはははは、頑張れよ! できるだけシードの奴らとカチ合わないよう、祈ってやる!」
店主に“祈る”なんて行為も言葉、随分シュールに映る。
鞘のベルトの長さを調節しながら、前回は誰それが強かっただの、人気負けしてただのという、だいぶ店主の主観が入った与太話を聞かされながら、アシュレイは一瞬で中身が消え去った巾着を意味もなく弄んでいた。
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