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シャンヴリルの黒猫
43話「大会参加申請」
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構いません」

 受け取ったペンで個人部門参加者の欄にアシュレイの名を書いた。係員はランクの欄を見ておや、と眉を上げたが、何事もなかったように再び営業スマイルを浮かべた。このあたりに、彼女が若いながらも激戦を極める武闘大会参加受付の係員を任された理由(わけ)が見える。

「個人部門アシュレイ=ナヴュラ様、22歳男性、Fランク剣士、魔法は使用しない、で間違いございませんか?」

「はい」

「かしこまりました。では個人参加1名で、参加費用が1000リールとなります。……はい、ありがとうございます。それではこちらをお付けください」

 クオリに白いバッジが渡された。花をモチーフにしているようだ。小さな花が塊になって咲いている様が描かれている。

「こちらのバッジは個人部門参加者の証となりますので、紛失のないよう、よろしくお願いいたします。そしてこちらが参加申請の写しです。これが参加申込書にもなります。お受け取りください」

 渡された紙は先ほどクオリが代筆した申請用紙の写しで、真ん中に大きく赤いインクでギルドの紋章が捺印されていた。

「そちらの参加申込書とバッジが揃わないと大会には参加できませんので、大切に保管なさってください。申込書の再発行は出来かねますので、悪しからず」

 神妙な面持ちで頷き、紙とバッジを鞄にしまうクオリにくすりと笑うと、係員は笑顔で彼女を見送った。

「以上で参加手続きの全ての過程を終了とさせていただきます。頑張ってください!」

 笑顔に勇気づけられて再び人混みの中に向かう。なんとか抜け出ると、ちょっと離れたところでユーゼリアが待っていた。

「お疲れ! できた?」

「なんとか……」

 ユーゼリアは快活に笑った。道端のベンチに2人腰掛けて疲れを癒す。

「で、結局あの人集りはなんだったんです?」

「そう、それよ! あのね、クオリもギルド加入の時に多分話を聞いただろうけど、武闘大会で優勝すれば賞金が出るでしょ。その他に何か不測の事態の対応の為にS系ランカーが賓客の護衛としてつくのよ」

「そういえばそんなことどこかで聞いたような……」

 遠い昔を思い出すような仕草とともにクオリが呟くと、ずずいっとユーゼリアがクオリににじり寄った。咄嗟に首だけ逃げるが、ガッと引っ掴まれた腕の力がいつになく強く、逃げ場はなくなった。

「それが、なんと今年はSSランカーがいらっしゃるらしいの! それも…それもよ! あの! 【竜騎士】カメリア=シルヴィオスなのよ!」

 クオリの記憶が正しければ、大陸にSSランカーは3人しかいなかったはずだ。Sランカーは9人と増えるが、それでも冒険者全体の数からみると、異常な少なさである。
 そして、その【竜騎士】カメリアといえば……
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