42話「闘争の町ファイザル」
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「それでも、走っている兎を短剣の投擲で仕留めるって……」
「ねぇ? ほんと、何でもできるから、彼と一緒に旅してからもう大助かりよ。罠じゃあ捕まえるのに時間かかるしね」
笑いながら言うユーゼリアだが、クオリは笑えなかった。
(魔獣に懐かれる人間なんて聞いたことがない。エルフでもないし、彼は一体……)
無性に、アシュレイ=ナヴュラという人物の正体が知りたくなった。ふと思い立って、ユーゼリアに耳打ちする。
「ところでリアさん、提案なんですけど……ごにょごにょ」
「……それいい! 採用!」
「何がだ?」
突然現れたアシュレイに飛び上がりながらも、なんでもないとユーゼリアと2人でごまかした。訝しげに2人を見ながらも、続きをせがんだシュラのブラッシングに戻ったアシュレイに、ユーゼリアと2人でホッと息を吐く。
結局、シュラについては“Dクラスの魔物”で話は通り、無事門を抜けることができた。
「さて、宿に向かって走るわよ!」
「なんでです?」
「早く宿をとっておかないと大会期間中ずっと野宿する羽目になるわよ! この時期ファイザルは余所者で大賑わいなんだから! この際宿のランクなんて二の次、部屋が空いてそうなところからドンドン行く!」
妙に手馴れた感のあるユーゼリアに従い、片っ端から宿を覗いていくが、案の定部屋は全て埋まっていた。
「うう、やっぱりギリギリすぎたかぁ…」
やや諦めの混じった10軒目の宿。恰幅の良いおばさんの店主に尋ねると、
「ああ、申し訳ないね。2人部屋がちょうど1部屋だけ空いてるけど、3人にはちょっと狭いなぁ」
「2人、ね……」
「ユリィとクオリはここで泊まるといい。俺は馬車の中で寝るとするよ」
困ったように眉を寄せるユーゼリアに、横からアシュレイが言った。おばさんがおやっと目を見開く。
「そんなことできません! ならわたしが…」
「いいからいいから。俺の方が頑丈だし、毛布をいくらか借りれれば問題ない。安い馬車でもないし」
「でも、アッシュさんは大会に出るんですから、ちゃんとした休養を取らないと……」
「おや、兄さん大会出場者なのかい! そうならそうと言ってくれなきゃあ!」
そこでおばさんが口をはさんできた。ぽかんとしているアシュレイの代わりにうんうんと頷くと、彼女は立派な胸をどんと叩いて言った。気のせいか鼻息が荒い。
「ならちょっと小汚いけど、うち旦那のベッドを使っておくれよ!」
「え?」
「サービスだよ、サービス! 私ら夫婦、っていうか、ここらで宿を経営している家はみーんな大会で儲けさせてもらってるからね! さあさ、これがお嬢さん達の部屋の鍵ね。290号室! 2階の一番奥だから
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