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月の世界
第十一章
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第十一章

「わしがいつも金庫の鍵を持っていることに」
「たまたまです」
「いえ、たまたまではないでしょう」
 すぐに突っ込みを入れたブオナフェーデだった。そして一つのことに疑問を抱けばそれは他のことにも飛び火するのはよくあることである。それは今もであった。
「そういえば陛下のお顔は」
「私の顔がどうかしましたか?」
「エルネストさんの従者のチェッコ君にそっくりじゃないですか」
「あれ、そうでしょうか」
「そっくりなんてものじゃない。声まで同じだ」
 このことにも気付いたのだった。
「おまけに仕草まで。こんなことってあるのか?」
「あるんじゃないですか」
「偶然ですよ」
 ここでエックリーティコとエルンストが突っ込みを入れる。
「それはただの」
「その通りです」
「そうですよ。御父様」
「ねえ」
 娘達もここで言うのだった。必死の顔である。
「他人の空似です」
「よくあることです」
「なあ、チェッコ君」
 そしてここで、であった。エックリーティコはミスを犯してしまった。ついつい。
「そうだよな」
「はい、その通りです」
「待て、今何と言った!?」
 ブオナフェーデもそれを見逃さなかった。
「チェッコ君と言ったな、確かに」
「あっ、しまった」
「これは」
 皆このことに唖然とした。だが言ってしまったことは戻らない。
「いや、これはですね」
「今ブオナフェーデさんが彼の名前を出したから」
「そうですよ。それでです」
「ついつい」
「いいや、もう騙されんぞ」
 彼もここで遂にわかったのだった。最早騙されることはなかった。
「わしを騙したな。そうだな」
「しまった、これは」
 エックリーティコも作戦の失敗を認めるしかなかった。ことここに至っては。
 ブオナフェーデは顔を真っ赤にして怒っている。怒り心頭であった。
「参ったな、あと少しだったのに」
「折角結婚できたのにな」
 エルンストもぼやくしかなかった。
「ここまで来て」
「さあ、どう責任を取るつもりだ」
 その怒り心頭のブオナフェーデが皆に対して詰め寄る。
「わしを騙した責任はどうしてくれるのだ」
「それは一つしかないですわ」
「そうです」
 その彼に対して娘達が話した。
「私達が幸せになることで」
「それで」
「幸せにだと」
 娘達の言葉に顔を向けるのだった。顔を少しそちらに向けて。
「御前達が幸せになるのか」
「はい、そうです」
「ですから」 
 二人はさらに必死に父に話すのだった。
「ここはどうか落ち着かれて」
「それで」
「むう」
 娘達に言われるとだった。彼はここで表情を少し変えた。そのうえで幾分か落ち着いたのであった。ようやくといった感じではあるが。
「わしとしては御前
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