ALO編
episode3 現実との戦い2
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◆
「!?」
「お父様!?」
俺と、横でじっと様子を覗い続けていた母さんが、同時に息を呑んだ。特に母さんの反応は、屋敷での時間の流れが何分の一かになってしまったような生活の中では久しく見なかった破格の反応速度で立ち上がり、爺さんを縋る様な眼で見る。
零れ落ちんばかりに大きく見開かれた母さんの目を、ゆっくりと立ち上がった爺さんが睥睨する。文字通りの「睥睨」だ。睥目し、睨みつける。その視線の鋭さに、威圧感に、母さんの体がみるみる縮んでいき、しかし何の意地か見つめるのはやめようとしない。
数瞬、睨み合い。
「……」
「……っ、……」
そして俺の方を見た母さんの目は、涙が落ちそうなほどに滲んでいた。
どうやら視線の空中戦は母さんが負けたらしい。それにしてもこの剣幕、ちょっと俺が無茶をするのを止めているだけには見えない必死さだ。そこまでする心情は、残念ながら俺には分からない。親っていうのはそういうもんなのか。或いは何か別の要因が絡んでいるのか。
「……支度せい」
母さんの視線が外れた後、爺さんが身を翻してゆっくりと道場の奥に向かう。
影のように付き従って歩いていく侍従長に、何かを耳打ちする。恭しく頷いた彼女が、壁際の無数にある扉のうちの一つ、大仰な鍵のかかった扉を開く。二人の肩ごしにちらりと見えたその先は、現実にあったとは少々信じがたい、ファンタジーの世界のような武器の山。おいおいおい。この屋敷なんでもありかよ。
と。
「御主人様」
「うおっ!? ぼ、牡丹さん!?」
「御主人様は、何をお使いになりますか?」
後ろから突然聞こえた声に、思わずちょっと仰け反った。
慌てて振りかえると、そこには茶髪の長い髪を後ろに伸ばした俺の添き人……牡丹さんが立っていた。俺の索敵スキルを無効化するとは、なかなかに高度な隠蔽スキル…って違うか。
脳内だけで冗談を自己完結し、問い返す。
「……使うって、何をですか?」
「立ち合いの武具をです。この四神守家、一通り以上の武具は揃っております」
それは銃刀法的にどうなんだ。
「……俺は、いいや。……喧嘩なんてしたことねーが……やるなら、拳だけだろうかと」
「かしこまりました。御武運を」
こちらも恭しく一礼して、するすると壁際に下がっていく牡丹さん。その動作に、足音は一切ない。……なんだあの『忍び足』スキル。メイ……失礼、使用人の嗜みとでも言うつもりか。それで身に付くなら俺の二年間の努力の積み重ねは何だったんだ。
……心を乱されてしまった。落ち着け。
そんな余裕はないと言ったばかりだろう。
何せ相手は。
見据えた先に、覇気とともに佇む、長柄の
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