第十章
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第十章
「是非共」
「ではその相手は」
「誰なのでしょうか」
「まずクラリーチェさんですが」
最初に名前を呼んだのは彼女だった。
「貴女はですね」
「はい」
「エックリーティコさんと結婚されて下さい」
「わかりました」
「はて」
横で話を聞いていたブオナフェーデはここで不思議に思うことがあった。
「どうして陛下があの人を御存知なのじゃろう」
「そしてフラミーニアさんは」
その間にも芝居は続く。ブオナフェーデだけが知らない芝居が。
「エルネストさんがいいでしょう」
「有り難うございます」
「何故あの人まで知っておるのじゃ?」
ブオナフェーデは話を聞いて首を傾げるばかりであった。
「不思議な陛下じゃな」
「さあ、御二人もこちらへ」
「陛下、お招きに応じて参上致しました」
「はじめまして」
早速この世界に出て来た二人だった。あくまで皇帝としてチェッコに応じている。
「貴方達もそれで宜しいですね」
「有り難うございます」
「身に余る光栄です」
「これで全ては幸福になりました」
チェッコは満面の笑みで一同に告げるのだった。
「さあ、皆でこの紙にサインをしましょう」
「はい、それでは喜んで」
「サインを」
まず皇帝であるチェッコも入れて六人が結婚証明書にそれぞれサインをする。それが終わると三枚のその証明書がブオナフェーデの前に出されるのだった。
「貴方も御願いします」
「父親としてですか」
「その通りです」
チェッコはここでも演じていた。
「ですから。どうぞ」
「わかりました」
そのまま素直に応えるブオナフェーデだった。ペンをエックリーティコから渡されるとそのうえでサインをするのであった。
サインはすぐに終わった。するとであった。
「さて、後はです」
「結婚式ですね、陛下」
「私達の」
「はい、それです」
笑顔で五人に応える皇帝であった。
「式はを挙げましょう」
「ですが陛下」
ここでエックリーティコはつい言ってしまったのだった。
「持参金ですが」
「おお、それですね」
ここで彼の言葉に頷いてみせた皇帝だった。
「それです、持参金です」
「それのことですが」
「ブオナフェーデさん」
ここでまた彼に声をかける皇帝だった。
「一つ宜しいでしょうか」
「わしにですか」
「娘さん達が結婚しますので」
まずはこう前置きする。
「だからですね」
「だから?」
「金庫の鍵を私達に」
「何っ、金庫の鍵!?」
ここでふと気付いた彼だった。
「金庫の鍵というのですか」
「ええ。いつも持っていますよね」
「あの、何故それを御存知なのですか!?」
流石にこれは彼もおかしいと気付いたのだった。
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