第一章
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第一章
月の世界
十八世紀ナポリ。その青い夜の下の街、ここに自称天文学者がいた。
耳を完全に隠したセンターで分けた茶色の髪にその髪とよく似たブラウンの瞳をしている。顔は白く一見すると女性にも見える整った顔立ちをしている。眉が細く実に形がいい。
服は白衣である。白い服の上にさらに白い上着を着ている。彼は今自分の家の屋上にいる。そこで腕を組んであれこれと歩き回りながら考えていた。
「そうだな。ここはどうしようか」
独り言を言いながら歩き回っているのであった。
「クラリーチェと結婚するには。ここは策で攻めるか」
そしてこうも考えるのであった。
「ブオナフェーデさんの好きそうな話でもでっちあげて」
どうもあまりよくない考えを持っているようである。
「だとすると。そうだな」
ここでふと自分の傍に置かれている望遠鏡を見た。一応外観は立派だ。本物ではある。しかし彼はあくまで自称でしかない天文学者である。
だがそれでもだった。彼の脳裏にあることが閃いた。そしてすぐにそれを実行に移すことにしたのだった。
「よし、これはよさそうだ。やってみるか」
にんまりと笑ったうえで意を決した顔になる。すると丁度下から彼を呼ぶ声がした。
「おおいエックリーティコ君」
「おや、ブオナフェーデさんですか」
「そうだよ、わしだよ」
下から彼に言ってきたのであった。下を見ると家の玄関のところに白い髭を生やして頭の禿げた太った老人がいた。丸い小さな眼鏡をかけていて赤い愛想のいい顔をしている。灰色の仕立てのいい服とタイという格好だ。その彼がエックリーティコに声をかけてきていた。
「今からそこに行っていいかい?」
「これは好都合だな」
エックリーティコは彼の姿を見て一人ほくそ笑んだ。
「よし、じゃあ早速仕掛けるか」
こう行ったうえで。実際に彼に声を返すのだった。
「ええ、どうぞ」
「そうか。じゃあ今から行くからな」
「はい」
こうしてブオナフェーデはエックリーティコのところに来た。そうしてそのうえで屋上で二人で話をすることになるのだった。
「いや、ブオナフェーデさん」
「どうしたんだい?」
「月がありますよね」
「うん、あれだね」
丁度上にある月を指差すブオナフェーデだった。それは見事な黄色い満月である。青い夜空の中にその満月だけが静かに浮かんでいる。
「あの月がどうしたんだい?」
「今その望遠鏡は修理に出していますが」
とりあえず嘘をはじめるのだった。嘘のはじまりは嘘からであった。
「その望遠鏡から面白いものが見えたのです」
「月の面白いものをかい?」
「はい、それは何だと思います?」
思わせぶりな顔で老人に問うのであった。
「それは一体」
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