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河童
第四章
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、いやに派手なサドルとか、前輪だけ妙に新しい泥除けとか、ちぐはぐな部分がいっぱいある。…本当に、変な自転車…
「ま、その話はおいおい…」

――おいおいって、いつ?

あと数十分したら、ここから出て行くくせに。
彼も、お父さんとかと同じ大人なんだ。楽しそうに自転車直しながら、平気で嘘をついて。
…これ以上口をきけば、嫌なことしか言えなそうな気がして、ぐっと唇をかみしめた。
…少しだけ、期待してたんだ。この生活が少しでも、変わるかもしれないって。突然現れた河童が、私を変えてくれるかもしれないって。…だけど違った。彼はここを通りすがっただけの、他人。
ううん。期待なんて元々してない。私は平然と見送るんだから。どっかの安いドラマみたいに、涙浮かべて見送ったりなんてしない。…だって馬鹿みたい。楽しそうに出て行く河童を泣きながら見送るなんて。


遠くのほうで、ぶろろろ……と音がした。
もう、なにも感じない。心が麻痺したみたい。河童が楽しそうにここを出ることにも、またいつもの生活が戻ってくることにも…私が、結局変われなかったことにも、全然心が動かない。
「やっべ、あれ親父さんの車か?」
「……うん。でも裏門に回れるわ」
「案内たのむわ」
ガレージの外では、まだ朝とは思えないような強い日差しが、梢を貫いて地面を焼いていた。今年一番の暑さになるかも。用水路のあたりで河童が熱射病かなにかで伸びて、またうちに担ぎ込まれる場面を想像したけど、そっと打ち消した。
滅多に開けない裏門を、力いっぱいこじ開ける。んー、と力を入れて寄りかかったら、河童が手を添えてくれた。
「色々、ありがとな」
「……ん」
挨拶なんてしてやらない。自転車が門を出たのを見計らって、また門を閉めようとしたとき、河童が少しだけ門に肩を挟んで、私を見下ろした。…ひどく、真剣な目で。
「さっきの話の続きだ」
「…もういいよ。お父さんたち、もうガレージに入ってる」
「お前は自分で思っているよりも、ずっと脆くて危うい。…お前には、大人が必要なんだ。お前を、環境を変えてくれる大人だ」
「いない。…言ったでしょ」
「いる」
なんで言い切るの。私のことも、周りの大人のことも、よく知らないくせに。
「いいか。自分を追い詰める前に、周りに目を凝らせ。1人くらいはきっといる。お前がサインを出さないから、手を差し伸べられないんだ」
「……いないかも、知れないでしょ」
「いいからやってみろ。いなかったら」
言いかけて、彼はメモ帳のきれっぱしみたいな紙に何か書いて渡してきた。
「俺がなる」
紙切れには、住所が書いてあった。
「俺は学生だ。正確にはまだ大人じゃない。だが近いうちに大人になる。…やばくなったら、俺のところに逃げてこい」

―――張り詰めてたものが、全部ぼ
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