第二章
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たくそ」
…皮肉が口をついて出た。
で、さっと回れ右して足早に自転車の山を後にした。
「おい、ちょっと待てよ!パーツ探し終わってねぇよ!!」
「おもちゃで遊んでる余裕があるなら、一人でやればいいでしょう」
口の端がむずむずして抑えきれない。頬は勝手に熱くなる。耳が痛いほどの蝉の声を避けるフリをして、耳と頬を手でおおった。…次第に、駆け足になっていく。
「…天才だって!」
つい声にだしちゃって、慌てて口をつぐんだ。…グミの木に囲まれたいつもの小道が、少し眩しく感じた。
玄関を開けると、奥のほうからけたたましい電話の音が聞こえた。…お父さんの声みたいに。どうせこの時間に無遠慮に掛けてくるのは、あのひとしかいない。なるべくゆっくり靴をぬぐと、きっちり揃えて電話の音がするほうへ歩いた。
「…はい、狭霧でございます」
よそいきの声で応じる。お父さんはそのほうが喜ぶから。
『わぁはなんしよるかっ!何度鳴らしても電話に出んと!!』
「ごめんなさい、ラジオ体操に行っていたの。お友達のおうちの近所でやってるって聞いて、ちょっと懐かしくなったの」
少し舌足らずに、ゆっくりと喋る。非行になんて走りそうにないカワイイ娘を演出。…非行なんてかったるいこと、やる気もないけど、疑われること自体がうざい。
『おっ…そかそか、ラジオ体操ば体によかばってん、これからも続ければよかばい』
「毎日早起きは大変そうだわ。…どうしたの?」
『…友達ちゆうんは、あの沙耶ちゃんとか琴美ちゃんが?』
「ううん、クラスのお友達」
『そか。…あんな…あんし、おいのいねか日に泊まりち、ちぃっと親の躾ばなってなかごたるな。…流迦ん友達にふさわしくなかちことあらんがね?』
…こめかみが、ぴりっとした。私があなたの言うこと素直に聞いているだけじゃ不満?友達まで、あなたの思い通りの子を選ばなきゃいけないの?
……はいはい、わかった。こう言えば満足するんでしょ?
「…2人とも手芸部の友達なの。どっちものんびりやさんだから、文化祭の展示物が間に合わなそうなんだもん。だからおうちに呼んで、一緒に手伝ってあげたくて」
家庭的な女の子たちなのよ、とアピールすればいい。このひとは、そういうのが大好きだから。
『ほんなこてぇー、流迦はよかおごじょばい!ええが、わいがおるときじゃったら、いっでん呼んだらよかよ』
「ほんとう?お父さん、ありがとう!」
『じゃっどん部活もてげてげにして、いっちゃんげぇにも顔出しゃったもんせ。な?』
いっちゃんに会いにいけと釘をさすと、返事も待たずに電話を切ってしまった。
…最近、いっちゃんの家に顔出すの、気が重い。
いっちゃんが嫌なわけじゃない。まだ幼い彼が、無邪気に私の腰にしがみついて『ぼく、流迦ちゃんのお婿さんになる
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