第一章
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私たちを手元に置きたがってる。そのためには、どんなことだってする。
とくに、私のお父さんはね。正直、何をするか分からない。
だから本気で上京したいなら、生半可な覚悟じゃダメだ。そのさきがけとして私たちは、まずは鹿児島弁を完璧に払拭して、東京の人に『こいつら田舎者』って思われないようにすることにした。
そこで始まったのが、鹿児島弁使ったら罰金ルールだった。
一回使うごとに50円の罰金。一学期の終わりから始めて、私は一度も罰金を払ったことがなかった。…今日までは。
「じゃ、新学期に清算ねー。…んっふっふ、この分だと『白熊』までの道のりは近いねー」
罰金は現金徴収じゃ生々しいから、沙耶がみんなの残高を計算しておいて、ある程度貯まったら『おごり』の形で徴収する決まり。白熊は一杯800円だから、えーと…
「…白熊、もう食べられるね。沙耶の罰金も合わせたら」
練乳がたっぷりかかったカキ氷に、黒ヒゲ危機一髪か!ってくらい刺さりまくる大ぶりな西瓜やメロン。その上に甘〜いあずきあんがふわり、ふわり…さらにその上に、なめらかな練乳がとろ〜んと…頭の中を駆け巡る、キンッキンに冷たい白熊。天文館通の名物スイーツ。定番にして最強。
んー、もう完全に白熊気分になってきた。
「今日なんか、冷た〜い白熊おいしいだろうね…」
「あぁ…いいねぇそれ…」
沙耶が早くもなびき始めた。
「え〜!…ちょ、ちょっとやめて!!夏休み中はいろいろ出費が多いんだから!!9月入ってからにしようよ、ね?ね?」
琴美が拝むような手つきで迫ってくる。
「ならんならん!カンッカンに暑い日に喰らわんで、何の白熊ぞ!!そして今日は最高のタイミングとみた!!」
沙耶が袖を振り払い、蹴りつける仕草をした。あ〜れ〜と甲高い声で叫びながら、琴美がくるくる回ってへたりと座る。金色夜叉のイメージらしい。2人は、この冗談を何度もやる。
「ほ、ほら、河童探し終わってないじゃん!今日は河童を探そうよ!」
琴美は話を河童探しに逸らしてきた。…ちっ。そうきたか。負けないわ、いいタイミングで蒸し返して何が何でも天文館通に連行してやるんだから。
「…で、なんで急に河童探しなの」
一応、話を振ってやる。
「そうそう!バレー部の先輩がね、朝錬の走りこみのときに、河童見たって!」
「……先輩が?」
…意表を突かれた。小学生の噂レベルだと思ったのに、私よりも年上の証言が来ちゃったよ。へたに否定したら、私の立場が悪くなるじゃん。迷惑な不思議先輩め。
「部活棟じゃ、この噂でもちきりだよ?用水路脇の畑からのっそり顔をだして、きゅうりを2〜3本もぎって食べてたってさ。で、横に植わってたトマトに手を伸ばそうとした瞬間、先輩が悲鳴あげたら食べかけのきゅうり放り出して用水路に飛び込んで逃げたって」
「それ
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