第一章
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第一章
スザンナの秘密
二十世紀イタリアのビオモンテ。バロックのまま残っている見事な屋敷であった。その豪奢な左右対称の美しさだけでなく歴史さえ感じさせる屋敷の中は外観と負けず劣らず見事なものであった。ビロードの絨毯に紅のカーペット、白い絹のカーテンと金のキャンドル。白い壁にそれ等のものが見事に映えている。
そしてその家具もどれも見事なものだった。黒檀の椅子やテーブル、柔らかい見事なソファー。中にいる者もそれは見事なものであった。
スザンナはこの屋敷の主であるジルと結ばれまだ一月だ。黒い豊かな量の髪をショートにしている。目はやや細いが吊っておらず横に奇麗に伸びている。鼻が高くそれがその細い顔とよく釣り合っている。背は高めで身体はすらりとしているが胸が目立つ。青い絹のドレスに身を包んだ彼女は今リビングにあるソファーに座りそこで浮かない顔をしている。その隣には大柄で肌の黒いいかつい男がタキシードを着て立っている。
スザンナは浮かない顔でその彼に言うのだった。
「ねえサンテ」
「何でしょうかお嬢様」
「もう奥様よ」
まずはこう彼に言葉を返した。
「一月経つじゃない、もう」
「これは失礼しました」
サンテは畏まった態度で彼女に頭を下げた。
「つい」
「貴方は私が子供の頃から傍にいてくれているから」
彼女の家から来ている彼女の執事なのである。
「それも仕方ないけれど」
「有り難き御言葉」
「まあそれはいいわ」
このことはどうでもいいというのである。
「ただ。煙草のことだけれど」
「それのことですか」
「ええ。主人はこのことを知らないけれど」
ここでまた浮かない顔になるスザンナだった。
「どうしようかしら」
「正直に述べられるべきでは」
「けれどそれはできないわ」
スザンナはサンテに対して言うのだった。
「だって。女が煙草なんて」
「結構あると思いますが」
「ないわ」
こう言ってそれを否定してしまった。
「そんな。女が煙草なんて」
「だから告白できないというのですね」
「その通りよ。どうしようかしら」
そしてまた言うスザンナだった。
「あの人もいい加減疑うでしょうし」
「煙草ならいいのですが」
ここでサンテはこうも言った。
「果たして」
「おいスザンナ」
ここで若い男の声が聞こえてきた。すると太い一文字の眉に彫のある顔の背の高い男がやって来た。身体は引き締まり黒い髪を後ろに撫で付けている。彼もまた立派な服を着ていた。黒い端整なスーツである。
「一体何処にいたんだ?」
「何処にってここにいたけれど」
「今外の道にいなかったかい?」
こう怪訝な顔で問い詰めるのであった。
「まさかと思うけれど」
「まさ
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