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いぶにんぐ
第一話
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といけません」
「そんなのいちいち守るかね。身分を証明する手帳だなんて銘打ってるけど、そもそもが『特殊外人』なんだから」
「それじゃああの女をどうするんです」
「…………」
 いくらかの破片を捕まえて、もう一度匂いを嗅ぐ御正。
 その傍では無意識的に眉をしかめている西園寺の姿があります。
「多分だけどね。彼女は、犯人を知ってるんだよ。いや、犯人になりうるような人物を知っているというか」
「つまり、こんな大穴を開ける馬鹿に心当たりがある」
「そう、そのとおり。何だ西園寺冴えてるじゃないか」
「早く終わらせて帰りたいんですよ、私は」
「そんなことはっきり言うんじゃない」
「しかし、先輩は犯人が彼女だと言っていませんでした? それなら犯人に心当たりがあるに決まってますよ。だって自分なんですもの」
「そうじゃないんだ。穴を開けたのは彼女なんだけど、彼女にとってはそれが不測の事態だったんだろうって話しさ。穴については犯人は姫ヶ里さんだ。でもこの事態はそれだけじゃ終わらない気がするのさ。君、言ってる意味わかるかい?」
「いいえ、さっぱり」
「流石だ。胸を張りなさい」
「えっへん」
「喧しい。馬鹿は黙っていなさい」
「先輩? 今のはひどいと思います」
「僕もそう思ったよ」
「酷いと思っているのに悪いことを言う人間は、尚更酷いですね。最悪です。いいですか。最悪です。大事なので二回言ったのですよ先輩。最悪なんですからね」
「そんな最悪な上司の命令を聞いてくれるかね、西園寺」
「命令に拒否権はありませんよ先輩。先輩がやれって言ったらやるんです」
「殊勝ではあるけど、日頃の行いがその言葉の真意を台無しにしてしまっている気がするね。お前ってやつはそうやって台無しにするのが上手な女なんだから」
「じゃあ今度も台無しにしてみせます。本気ですからね。命令とやらを聞かせてくださいよ。さあ」
「デッキを開けてきなさい。僕はあとからそこに行くから、僕らだけで内密な話ができるような空間に仕上げておくこと。いいね」
「はい。すぐに」
 小柄な少女が走り抜けていったのを見届けた御正は手に持っていた欠片を放り投げて移動を始めました。
 その足取りといえば、本当にゆったりとしたもので。この凄惨な現場に似合わないような余裕ぶりです。
 彼はそのままの歩みでとある座席に座る和装の女性――かの姫ヶ里に声をかけるのでした。
「お休みのところすみません。お話を少し聞きたいのですけど、よろしかったですか」
「動くんですか。いよいよ」
「いえ、そうじゃないんです。そんないい知らせじゃないんです。ただ本当にお話をしたくて」
「いいですけど、私ったら、何も知りませんよ」
「それはあなたが決めることじゃないですから。さあ、どうぞこちらに」
「御正さんって、
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