暁 〜小説投稿サイト〜
いぶにんぐ
第一話
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担当しますからね。草食系の先輩に安心をもたらす西園寺京香(きょうか)なんです」
「どうですか、御正さん。動きそうですか」
「姫ヶ里さん。これはちょっと難しいでよ。もうしばらく時間がかかるかもしれません」
「ちょっと待ってください先輩。誰ですこの女。着物だなんていやらしい格好をしているようですけど」
「お前はまず日本文化に陳謝しなさい。着物はいやらしくなんてないんだからね」
「はあ。申し訳ありません」
「どちらを見て言っているのかね」
「南南東の方を」
「恵方巻きじゃないんだぞ」
「ではどこに謝ればいいんですか先輩」
「姫ヶ里さんがいるじゃないか。彼女にひとまず誤り給え」
「ええ? こんな正体もしれない女にですか」
「コイツは本当に――どうもすみません姫ヶ里さん。こいつって礼儀ってものを地元においてきてしまったようで」
「いえ、気にしません。今は動くことだけが心配なのですから」
「ふうむ。折角ですけど、これは厳しいですよ。こんなことをした相手を捕まえても、この穴がふさがるわけじゃありませんからね」
「さいですか。それではしばらく?」
「ええ。休んでいてください。じきに然るべき手段が取られるでしょうから。すみませんね。毛布くらいなら頼めばあると思いますが、いかがですか」
「大丈夫ですから、お気になさらず」
 振袖を翻して場から離れる姫ヶ里を見計らったように、西園寺は自分の上司へと話しかけます。
「どうですか。あの女、怪しいですね」
「人間かい?」
「いえ、違うでしょう。人間じゃない匂いです」
「だろうね。僕もそう思った」
「じゃああいつが犯人ですか。荒縄で縛ってきます?」
「いらない。居住登録を済ましていたらどうするんだ。訴えられることはないだろうけど、赤っ恥さ」
「でも、先輩。このタイミングであやかしだなんて、怪しいですよ」
「ふん。あやかしが怪しくないものかね」
「洒落てる場合じゃないです」
「わかってる」
 ――あやかし。
 警察という身分でありながらそんな非現実的なものの事件を担当しているのがこの御正と西園寺でした。
 もちろんそんな組織の存在は公にはなっていません。
 彼らとて、身分を詳しく言えば――表向きには――警視庁捜査一課に配属されてはいますが、 その中に存在する非公式組織、対特殊外人捜査、というのが、彼らの本当の所属なのです。
 この世は誰もが思うほど、現実という囲いに収まっているわけではないということなのでしょうか。
「――犯人、彼女だな」


1-3

「――彼女? 姫ヶ里とかいう? 決め手はやはりあの匂いの濃さですか」
「それもそうだけど、あやかしなんて探そうと思えばそこらへんにいるからね。登録手帳を持ってるかはあやしいけど」
「それは義務です。持っていない
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