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いぶにんぐ
第一話
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って話しかけたのですけど、違うようですし」
「ええと……二つほど」
「はい?」
「いえ、二つほど、おかしなことを言っていますよ、あなた。そもそも僕を係員だと思ったらしいですけど、それって本当に? 嘘ついていません?」
「嘘なんて」
「そうですか。いえ、係員の方は制服を着ていらっしゃるでしょう。それに比べて僕はと言えば、コート着込んでる。どうして僕を係員だと思ったんです?」
「それは、だってなんだか係員さんに混じっていたものですから」
「成程そうですか。それじゃあもう一つ。じゃあどうして僕が、係員じゃないと思ったんですか?」
「だって、あの女の子に指示を出していたじゃないですか。あの娘、どう考えても私より年下ですよ。係員なんかじゃないです」
「今年で彼女は十七になります。あれでも一応社会人なのですけどね」
「御正さんの部下?」
「そうです。というのも、僕って警察なんですけどね? たまたま居合わせたんですよ」
「警察」
「はい」
「警察……」
「何か?」
「いえ、何も」
「ならいいのですけどね。しかしどうして僕の身分を?」
「その、偉い方なら、この車両を動かせるかと思って」
「懲りない方だ。素晴らしいですね。根性があります。ですが、それだけじゃ世の中は回らないんですよ?」
「それは、もちろんそうでしょう」
「でしょう? そんな世の中ならこの世で一番えらいのは野球部とラグビー部になりますからね。――あ、ここ笑うところです」
「あはは……」
「無理しないでください。無視されるよりはいいですけど」
 電話を終えた西園寺は、正直気乗りがしない様子でした。
 彼女は一刻も早く帰りたかったのです。
 そこに何か理由があるというわけではありませんが、自分を連れて行ったくせに自分に隠れてこそこそと話し込む上司の姿が気に食わなかったというのは、間違いなくあるのでしょう。
 ですから彼らのボスにあたる、課長と言われる人間に話を通したとき、正直気が気でなかったのです。
 限界だった。
 こんなこと、さっさと終わらせたいのです。
 そんな状況にこそこの西園寺という少女の直感が冴え渡ることを、他でもない西園寺は知らないのですから、一層ストレスは鬱積していくのみなのでした。
「何かわかりましたか、先輩」
「爆薬を使った様子はないね。匂いもない。破片から見るに、内側から破壊されたもので間違いないと思うのだけど、どうだろうな」
「私は鑑識じゃないんでわかりません」
「これだけ状況が残ってるんだから、お前は少しくらい読み取ろうとしなさい。洞察力の欠片もない女だ。お前は」
「そこは先輩の領分ですから。介入はしませんよ」
「どうしてツーマンセルでそんな区切りがあるのかね」
「ツーマンセルだからこそじゃないですか。体張るのは私が
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