第一話
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の車内が大きく揺れたのは。
同じくしてデッキの方から何か大きなものが転がる音がします。
それは爆発音にも似ている轟音でした。
「なんだろうな。今のは」
「さあ。ダイヤの遅れにむかっ腹を立てた乗客が壁でも殴ったんじゃないですか」
「それであんな音が鳴るのは西園寺くらいだろう」
「または私と同系統の存在ですね」
「そういうことを言うんじゃない」
「すみません」
前の車両から走ってきた係員が、つい先程まで西園寺に絡まれていた係員へと告げ口をすると、位置の関係からそれは彼の耳にも伝わります。
信じがたいようですが、けが人が数人出ているとのことで、そうなると黙っていられないのがこの二人なのでした。
西園寺は何かを感じ取ったように弁当を急いでしまいこみ、ティッシュで口周りを拭き取ってすぐに立ち上がります。
その隣の彼はといえば、前の車両へと走っていく西園寺を見ながら係員へと話しかけるのです。
「申し訳ありませんね。何か起きたようなのですけど、状況を説明してもらえませんか」
「いえ、それがなんと申し上げた良いのかさっぱりでございまして」
「ご心配なく。僕と先ほど駆けていった小柄な少女は――つまりこいう仕事のもので」
黒いコートから取り出したのは大きな金の徽章が入った、これまた黒い手帳。
「どうも。御正(みしょう)と言います。さあ、状況を」
縦に開かれた警察手帳に貼られた顔と並んでみると、少し不気味に見えるのがこの御正という男の素顔なのでした。
1-2
御正が係員に誘導された先は、彼が座っていた二号車の前、一号車。
連結部をくぐり抜け先へと行くと、そこは想像を絶する光景が広がっております。
「これは、ええと、なんていうんでしょう。壁に大穴が空いていますけど」
「そうです。その通りです」
「こうなった経緯を訪ねても、きっと何もお分かりならないのでしょうね。こんなこと、何がどうなっても基本的に起きる事態ではないですから」
「はい。もうさっぱりで……。兎に角車両は停止させたほうがいいですよね?」
「もちろんです。穴が空いているんですから、これはもうそうせざるを得ないでしょう。穴の空いた付近に座っていらっしゃった方々は?」
「幸い軽傷の方ばかりで、デッキの方で簡易的な治療を」
「成程。ではとりあえずこれを止めましょうか。穴があいたままではあそこから誰かが出て行ってしまうかもしれませんからね。逆も然りですが」
「はあ」
係員は慌てた様子で騒然とする車内を駆け出しましたが、新幹線を止めただけで原因がはっきりしないのは当然でした。
御正が動き出した理由に関わってくることなので、おおよそ間違いはないのでしょうが、それにしても確信があるわけではないのです。
このような大穴が空いた理由を、
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