第一話
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ようですけど、それでも私はやっぱり新人なんですかね」
「新人だろう。少なくともファイルを持ってこれないようじゃ、新米さ」
「二年経っていても?」
「二年経って資料の一つももって来れないやつなら既にいないだろうがね」
「クビキリってことですか。それは嫌です。嫌ですよ先輩。どうにか阻止してくださいませんか」
「いい方法がある」
「ぜひ聞かせてください」
「お前がファイルを正しく持ってくればいいんだ。そうしたら僕は西園寺の評価レポートにそこまで辛辣なことを書く必要はなくなるのだからね。言ってることわかるかい? それほど多くは言ってないぜ。言われた仕事をしっかりとやりなさいって、それだけなんだから」
「頑張ります。資料整理から間違いないようにしていきます」
「よく言った。それでいいんだよ。その言葉を、ずうっと待っていたんだから」
「時に先輩」
「何かね」
「あまり辛い仕事は寄越さないでくださいね。その、無理ですから。レポートに辛辣な言葉を書かれるような結果にしかなりませんから」
「西園寺……。お前ってやつは本当に、素晴らしいよ。完璧だね。今までの人生で君のような素晴らしい足かせに出会ったことはないよ。君がいれば僕が幼少期の頃に飼っていたセントリーバーナードのフラッシュも逃げなかっただろうに。重くて逃げられないからね」
「皮肉りますね、先輩。いいですよ。今回については私が悪いので、受けに回ります」
「今回にだけかね。本当に」
時刻を見ればあとすでに到着していてもおかしくはない頃です。
しかしそれは正常に運転していればの話で、出発する少し前に人身事故の関係でこの新幹線は大幅に遅れているのです。
彼らがこれだけ騒いでも目立たない程度に車内がざわついているのは、つまりはそういうことなのでした。
「遅いですね、これ。あとどれくらいでつくんでしょう。――すみません。到着まであとどれくらいでしょう」
「一時間くらいでしょうか。詳しくはまだなんとも」
「一時間? 人身事故っていうのは嘘で、路線でも爆破されたんですか」
「いえ、そういうわけでは」
彼女の鬱憤もいい加減限界のようです。
係員に当たり散らしては弁当にかぶりつき、時折米粒をあちこちへと飛ばしているのですから、誰でもわかるという有様でした。
「君はね、西園寺。少し落ち着きなさい。新幹線って言っても、結局は人間の作ったものだよ。乱れもするさ。ネットワーク接続だって同じ。完璧に安定しているなんて、この世じゃありえないんだからね」
「完璧に安定していないなら文句言われても仕方ありませんよね。それって欠陥ですから」
「欠陥はお前だよ。ああやって係員に文句言ったところで、到着はあと一時間後だ」
「むう」
小さな体躯をした西園寺が唸ったのと同じタイミングでした。新幹線
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