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いぶにんぐ
第一話
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んだ西園寺。顔が近い」
「照れないでくださいよ先輩」
「照れてない。口が臭いんだ」
「酷いです! 仕方がないんですよ。だってお弁当食べているんですから」
「わかっているなら近づけるんじゃない。その悪臭が溜まった口腔を」
「レディーの扱い方がわかってないって言われますね? 先輩」
「言われるとも。それも來背先輩に」
「やっぱり。傷つきません? そんなんじゃいつまでたっても彼女できませんよ」
「傷つくが、それよりもなによりも僕は部下の扱い方を知りたい。従順に言うことをきけとは言わないが、僕のことをある程度は理解してくれている人間に成長させるような技術とでもいうか」
「先輩が求めることなら、私は頑張れるんですけどね。どうしますか。頑張りますか? 私」
「大いに頑張れ。そしていい加減仕事ができるようになり、僕に回ってくる仕事をゼロにしろ。あと私生活の改善もな。西園寺がまだ年頃の女なのはわかるが、僕は香水の匂いも嫌いだ。常日頃からあんなきつい匂いを振りまくような柑橘系女子は真っ先に神経を疑う対象でしかない」
「ちょっと要求が多すぎます。善処しますが、時間が必要ですね」
「ほう。どれくらいかね」
「ちょっと待ってください。弁当を平らげてから計算を始めます」
「そのペースなら一体何百年後に僕の要求は満たされるんだろうな……」
 彼が何を聞きに行ったかということですが、それについては既に西園寺に話した中に出ていることです。
 ただ彼女が気づいていない上に、彼もまた、気づかせるつもりがないのですから、これ以上のこのことについて進むためには何か多少のインパクトが必要になるのです。
 それがなんなのかは、誰にもわかりません。
「しかしな、西園寺。僕は心配しているぞ。また明日からは僕らに仕事が戻ってくる。これまでのような日常はごめんだ」
「そうはいいますが、先輩。私は今日で何かが変わるような、そういう衝撃の大きい出来事に出くわしてはいませんよ。ですから明日の私が今日の私よりめざましく変化しているとは思い難いのです」
「本人が疑うならそうなんだろうな。僕はおとなしく君を叱る準備をしながら布団に入ろうと思うよ」
「よろしくお願いします」
「デスクワークが苦手なんだろうな、西園寺は」
「そうですね。きっとそうです。先輩が言うならそうなんでしょう」
「ファイルを持って来いという指示すらこなせなかったときはね、僕は本当に、どうしたらいいかわからなかったんだからね。本当だぜ? 嘘言ってるんじゃない」
「少し大げさですよ。あの時私はまだ新米だったんですから。先輩だって二時間かけて間違ったファイルを持ってきた私を、そういう目で見ていたじゃないですか」
「今も新米だぞ、西園寺。忘れちゃいけない」
「ですか。もうこの仕事について既に半年が経過したの
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