第一話
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でしょうか。
「そう言えば先輩。聞いてみたいんですけどいいですか」
「嫌だ」
「あのですね? あの日、先輩は珍しく私に任せましたよね。その、選択を」
「なんのことかね」
「ですから、山の怪のことです。どっちの味方をするか――と」
「ああ、そんなこともあったね。それがなにか?」
「いえ、どうしてそうなったのかなって。私はまだまだ先輩に管理されていなきゃいけない身分じゃないですか。先輩も、そのことを理解した上で私に役割を分担してますし。その、あんなふうに自由だったのは初めてじゃ?」
「嫌かね、自由は」
「嫌です」
「おや、そう? 普通はそうじゃないんだがね」
「だって不安じゃないですか。先輩? 私、上手く出来ましたか? あの時、本当に山の怪を黙らせてよかったんですか。あっちにも使命があったのに」
「いいかい、西園寺。君はきっと、これから色々なものを見ていくんだ。本当に様々なものをね。それをどう咀嚼するかは僕が決めることじゃない。僕の管理外だ。僕はただ、お前の力を管理するだけ。お前の思想までどうこうしようとは思わないよ」
「それは、そうですけど」
「正直言うと、お前がそういうふうに思うのは想定済みだった。自分で選択することなんてなかったものな。そんなものさ。十七の少女なんて。でも、だから自由にした」
「どうして?」
「知らんよ。ただ、そう言われたんだ。僕の、信頼する元上司にね」
「來背さんですか? そうですね?」
「ノーコメント」
「ええ!?」
御正が來背に訪ねに行ったことというのが、要はそれだったのです。
彼女を見てもらった上で、彼女をどうするべきか。
御正なりの不安を、御正なりにぶつけたのでしょう。
これもまた、運命的だったのかも、しれません。
「お前は自由に考えなさい。そして、自由に悩みなさい。その挙句に何か大きな失敗をしたら、そこは僕の役割だ。これからは、そういうふうにお前を育てていくことにしようかな」
「育児放棄ですか!」
「信頼の形だと言ってもらいたいね。そもそも僕がいつお前を捨てた。お前のことでこんなに頭を痛くしている僕が、それを無駄にするなんてもったいないことをするものか」
「……先輩」
「ただ、この手紙に少しわからないところがあってね。この意味をお前にも聞いてみようかな」
「どれです?」
「最後だ。ここに、『運命的な出会いも、果たせました』と書いてある。この意味はなんだろうな」
「知りません」
「早いな。本当に考えたかい?」
「はい。ですからいいんです。今はとりあえず、私のことばかり考えていてください」
「はあ……?」
ひとまずこの話はこれでおしまい。
御正と西園寺の新設コンビは、こんな風に今日も仕事をこなしていくのです。
運命という縁に、たぐり寄せられながら
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