第一話
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。半年は」
「あの先輩と半年一緒にいるんですから、それはすごい事なんですよ。みなさん言ってます」
「成程。僕はそういうふうに見られていたのか」
「まあそれはこの際いいです。それで、お墓がなかったという話の続きですけどね? まさかそれで終わりじゃないでしょう」
「一応ね。これ、見るか。昨日届いた手紙だ。差出人は姫ヶ里。例のお姫様さ」
「そこにはなんと?」
「うん? お墓、ありました――ってさ」
「はあ? 一体どこに」
突っ伏していた西園寺が勢いよく顔を上げ、モニターと御正との間に割り込んでいます。
丁度向かいのデスクから卑しい笑い声が聞こえますが、この際それはどうでもいいのでした。
西園寺には、お墓の真相が何より気になったのです。
「いやな。墓、随分昔に場所を変えていたんだとさ」
「どこに」
「決まってるだろ。姫ヶ里が支配する、あの山だ」
「そんな。それじゃあはじめから、そこにあったんですか」
「そういうことだ。種族を超えて愛したのに、死んで『はいさようなら』なわけがあるかと、怒られたらしい。ふふ。中々面白い勝気な神のようだね。彼女だから、きっとここまで人を愛せたんだろう」
「いや、でもそれっておかしいですよ。だって、じゃあ身内はなんて言ったんですか。拒否したはずじゃないですか」
「知るか。この手紙にはそこまで書いていないよ。ただ、僕が思うにだけどね。きっと、人間の男の方も、同じことを考えたんだと思うよ」
「よくわかりません。先輩。そんな風にはぐらかすのが、私は嫌いですよ」
「知るかね。こんなの僕の憶測でしかないんだ。あとは君が勝手に察したまえ」
「愛だなんて、十七の私にわかりますか」
「ふん。色恋のいろはを部下に教え込むほど、僕は暇じゃないんだ。いいからどきなさい。仕事ができない」
「先輩だって言うほど色恋に敏くなんてないくせにそういうこというんですもんね。嫌だなあ、童貞は」
「おいちょっと待て。僕は確かに恋愛経験は豊富ではないけど、童貞ではないぞ」
「慌てて否定しちゃいけませんよ先輩。ばれます」
「全く。西園寺と渡り合うには百歳以上低年齢化しなくてはいけないから疲れるよ」
「どういう意味ですか!」
運命だなんてものは、結局のところそんなものなのかもしれない――と、御正は心のどこかで思いもしましたが、それで誰かが不幸になったかと言われればそんなこともないように、運命的だろうとそうでなかろうと、目の前の現実から逃げるのはとても大変な作業なのかもしれません。
あの日あの時、あの新幹線に偶然居合わせたのも運命的であったと言えるでしょうし、御正が姫ヶ里という少女に必要以上に肩入れしてしまったのも運命的でした。
果たして、どんな運命を辿っていても、九州に彼女の父の墓はなく、はじめから母の下にあったの
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