第一話
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扉をがっちりとロックしている少女と御正のものでした。
「どうするんですか、先輩。いい加減にしないと応援来ますよ。そうなったら私、嫌です」
「僕だって嫌さ。しかしね西園寺。これは難しい話だよ。使命と信念なんていうのは、水と油だ。対立したら絶対交わらないのさ。そういう時ってのは、僕は基本的に業務的になるのだけどね」
「じゃあ今回も?」
「しかし今日はオフなんだ。私情を挟んでも、文句を言われる筋合いはないね」
「それでこそ私の先輩です。では私はどうしますか」
「どうしたいかね」
「は?」
「君は、あの二人を見てどうしたい?」
「珍しいですね。私に決めさせてくれるんですか」
「オフだからね」
「そうですか」
にんまりと大きな笑顔一つ浮かべて、西園寺は一度咳払いをします。
彼女は仕事に入るとき、いつもこうして大きな咳を一つするのです。
それが、彼女なりのルーチンなのでした。
「あの女は気に入りませんけど、あのバットマンもどきも気に入りません。私はあの女の方を助太刀したいと思います」
「そうかね。ならそうするといいよ。僕は何も言わないからね」
「本当にどうしちゃったんですか先輩。まあ、好きにやらせてくれるって言うんだからいいんですけどね」
「殺すんじゃないよ。追い返す程度にしなさい」
「報復が怖いですよ、それは」
「ここは人間の社会だ。あやかしには少しだけ、心苦しい思いをさせるね」
「成程。ははっ」
快活に笑う西園寺とは逆に静かに睨みつける山の怪は、ぎらりと光る刃を西園寺へと傾けます。
「失せろ小娘。これは山の掟の問題だ」
「いいや、違うね。これは人間とあやかしの問題だ。あやかしが人間の公共交通機関を利用しちゃってるんだもんね」
「わけのわからないことをぬかすな」
「西園寺、時間はないよ。直ぐに終わらせ給え」
「了解です、先輩。ようし、楽しくなってきた」
「さあ、姫ヶ里さん。野蛮なことは僕の部下に任せておきましょう。ただ傍にいるとかなり危険なのでね。扉のむこうで休んでいることにしませんか。コーヒーくらいならおごりますけど、いけます?」
「「え? いや、あの……?」
「いいんですいいんです。あの女は、元々こっちに収まる器じゃないんですから。さあ、こちらに」
「貴様! 姫をどこに――」
山の怪の言葉を最後まで聞くことはできませんでした。
それは轟音と器物だった破片にかき消されたからです。
人の目では追えないようなその一瞬の出来事の詳細は、単純に西園寺の体当たりという、技とも呼べないような技。
彼女の立っていた場所はあの衝撃の土台となったために陥没しています。
「あ、あの人、何者ですか」
「僕の部下ですよ。ただの少女とはいきませんけどね。とある事情でうちの職場が引き抜いたんです。物理法則
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