第一話
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変わってますね」
「そうですか。まあ、正常ではないと自負していますけどね」
「ふうん」
立ち上がた姫ヶ里は御正の二歩後ろを付いて歩きます。
御正には背に刺さる伺うような訝しい視線が存分に感じられますが、それもすぐそこまで。
一号車とは違って静寂が支配するデッキへと入った途端に、彼は問いただすような視線を彼女に向けるのです。
「西園寺。絶対に誰も入れてはいけないよ」
「もちろんです」
「ええと、なんのつもりですか」
「いえ、ですからお話しを聞いておきたいんですね。姫ヶ里さんに。座りますか。椅子か何かないかね」
「ありません」
「探してもいないだろうに、君は」
「――御正さん。座るのはいいですから、早くしてください。お話ってなんですか」
「……いくつかあるんですがね。まずはあなたの身分についてです」
「身分?」
「ええ。お仕事は何を?」
「陶芸をしています」
「故郷はどちらで?」
「東北の方です」
「両親はご健在で?」
「父がいません。母は同じく陶芸をしています。変わり種で、ずうっと小屋にこもっていますけど」
「あなたもそうだ? 母と共にこもる生活を?
「……はい」
「成程」
「終わり?」
「ええ、終わりです」
「これでなにがわかるんですか?」
「少なくともあなたがとても正直だということは分かりましたね。というのもですね、姫ヶ里さん。僕はあなたの母を知っている。姫ヶ里というのは東北の高尚なあやかしの一族の名前ですからね。以前のパートナーと東北へ出張に行った時にお世話になったんですよ。成程、居住登録は住んでいるようですね。あのお母様のお子様ですから」
「母上と知り合い? まさか」
「まさか? どうしてそんなことが?」
「だって、母はずうっと山に篭っているんですよ?」
「知っています。あの山は全部あなたの一族の管轄ですからね。守っていらっしゃるんでしょう」
「…………本当に知っていらっしゃるの?」
「ええ。僕はあなたがたのような存在を扱う仕事ですからね」
「でも警察だって」
「警察ですとも。非公式ですけど」
言葉が続かず、つばをひとつ飲み込んだ姫ヶ里。
生まれた時からあの山で育ったこの少女には、一体自分がどういう存在なのかが分かっていないのです。そしてその無知さは、明らかににじみ出ているものでした。
御正が嗅ぎつけたのも、そんな些細な部分なのです。
「どちらかといえば神に近いあやかしですからね。余計にご存知なかったのでしょう。母が一体どんなふうに人間と付き合っていたか。そして、あの山から離れたとき、それがどんな結果を招くか」
「……私は、何も壊そうだなんてつもりはなかったんです! 信じてください」
「信じますよ。あの山を離れて、あなたは力の制御が上手くいかなくなったんだ。名
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