一緒に歩く道
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時間が過ぎるにつれて段々と詩乃の表情が硬くなっていき、観覧車を前にする時には無表情といっていいほど緊張しているようだった
その理由は理解しているし、俺がなにか言っても逆効果だというのはわかっている
だから何も言わずに手を引いて観覧車の一つのゴンドラ内へ入った
ゴンドラ内には灯りがないため陽の落ちた今、内部を照らすのは外に広がり街の星のようなネオンサインだけ
普段ならその美しさに見惚れ、感想の一つや二つ口から漏れるところなのだがお互いに緊張しているためゴンドラ内は上へ上へと上がる際に発生する僅かな金属音以外なんの音もしない
詩乃は外の景色に目を向けているものの、その瞳には外の美しいネオンサインが一つも映り込んでいない
そんな二人の様子なんてお構い無しにゴンドラはやがて観覧車で最も高いところへ到達する
詩乃は何かを言おうと口を開くが、まだためらっているのかすぐに口を閉じていまう
このままでは何も進展しないまま地上に戻ってしまうと考えた俺はこちらから切り出すことにした
「詩乃。あの日の俺の告白の返事を聞かせてくれないか?」
「う、うん。わかった……」
数秒間口をパクパク動かしていた詩乃はやがて手を握り締めるとしっかりとこっちを見つめ……
「私でよければ……その……あなたの側に居させてください!」
「もちろん、喜んで」
俺が一瞬の躊躇いもなく頷くと詩乃は涙を流しながら抱きついてきた
「やっと……燐の彼女になれた」
「そうだな。俺も詩乃の彼氏になれて嬉しいよ」
「本当に夢みたい……」
「詩乃……ちょっと離れてくれないか?」
顔を俺の胸板にすり寄せている詩乃の肩を軽く叩いて、顔と顔が向かい合うように体勢を変える
「えっと……なに?」
「その……すまないけど目を閉じてくれないか?」
さすがに今からする行為を考えると赤面は隠せない
俺の頬も赤くなってるんだろうな……と、どこか他人事のように考えながら面白いぐらいに慌てる詩乃を見つめた
「う、うん。一思いにやっちゃって」
「一思いにって……まあ良いけどさ」
目を堅く閉じて軽く唇を突き出している詩乃に顔を近付けて……ネオンサインをバックにキスをした
「……世のカップルはこんな恥ずかしいことを日常の習慣の如くやってるのか?」
「……信じられないけどそうみたいだね」
詩乃は顔をさらに赤くして俯きながらモジモジしている
うん、そうなる気持ちは俺もわかる
「さてと、余韻に浸っていたいのは山々だがもうすぐ下だぞ」
「えっ……もう?」
どうやら極度の緊張や多幸感で時間の感覚が麻痺していたらしい
「ま、これからもゆっくりと愛を深めていけば……」
「ちょ、
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