第二十五話 夜の難波その六
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「それがね」
「えっ、おうどんにコシがない?」
「そうなんですか?」
「元々の大阪のうどんはそうなんだよ」
おじさんは驚きながらそのコシのあるうどんを食べる五人に話した。
「実はさ」
「コシがなかったんですか」
里香も驚いている、五人の中で最も博識の彼女でも。
「大阪のおうどんは」
「くたくたに煮てさ、そうだったんだよ」
「じゃあ今私達が食べているおうどんって」
「それ讃岐風だよ」
今うどんの代名詞になっているそこのだというのだ。
「そっちの作り方で茹で方だよ」
「昔の大阪じゃないんですね」
「今じゃね、うどんもコシが要求されてね」
おじさんはここでも残念そうに言う。
「そうしたんだよ」
「そうだったんですか」
「大阪のうどんはね」
当然この難波もだ。
「そうだったんよ、本当に」
「コシのないおうどんって」
「きつねも」
「勿論だよ、鴨も月見もね」
そういった他のうどんもだというのだ。
「だってあれだよ、麺は一緒だから」
「だから肉うどんも若布うどんも」
「そういうのも」
「うどんなら全部だよ」
具に関係なくというのだ。
「それが変わったんだよ」
「讃岐風にですか」
「そうなったんですね」
「ああ、まあそれはそれで美味いけれどな」
おじさんは味自体は否定しなかった、美味いというのだ。
「昔の味がなくなったのは寂しいね」
「昔の味がなくなったんですね」
「もう」
「まだ残ってはいるけれどな」
だがかなり減りやがて消えようとしている、このことが寂しいというのだ。
そうした話をしながらうどんを食べた五人だった、味自体は五人がよく知るうどんで美味かった、だがそれでも。
「昔のおうどんじゃないっていうのは」
「意外よね」
「っていうか大阪のおうどんってそうだったの」
「昔は」
五人もはじめて知ったことだった、そして。
食べ終えてお店を出てまず里香が言った。
「ちょっとね」
「思わなかったわね」
「コシのあるおうどんだったって」
「それがね」
「本当にな」
五人で話す、そしてだった。
里香は今食べたきつねうどんの味を思い出しながら四人に言った。
「どっちがいいと思う?」
「あたしは今かな」
最初に答えたのは美優だった。
「やっぱりな」
「コシがある方がいいわよね」
「冷凍うどんだってそうだろ」
スーパーに行けば何処でもある、安いが簡単に茹でることが出来てしかも抜群のコシがある。コシを味わいたければこれだ。
「コシがいいからさ」
「そうよね、コシがあるおうどんがね」
「いいからな」
「そうよね」
「私もね」
琴乃も考える顔で言う。
「おうどんはやっぱり」
「琴乃ちゃんもよね」
「うん、コシがないと」
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