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SAOもう一人の聖騎士
追想〜迷う彼と踏み込む彼女〜
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「ねぇ、ALOやってる人だよね?」

取引先の課長とウチの上司を乗せたタクシーを見送って一息ついていた俺は、その声に振り返った。店の女の子が立っていた。終わりのほうで俺たちのテーブルについた女の子だ。

「えっ・・・・・・確かにALOはしてるけど、なんで?」

なぜそんな事が分かったのか全く分からず混乱している俺のほうへ彼女は歩み寄ると、にっこりと愛らしく笑って俺の両手首をとった。

「もう少し飲んでいけば?」

そう言うや否や、こちらの手首をつかんで、俺を店の中へつれ戻した。

「ケイちゃん、お客さんもう少し飲んでいくって言うからそのままでいいよ」

テーブルを片付けようとしていたボーイに彼女は声をかけた。ボーイは俺の顔を見て少し驚いたかのように、ほんの少し右眉を上げた。テーブルから離れるとき、すれ違い様「珍しいこともあるもんだ」と彼女に小声で言うのが聞こえた。ソファに並んで座ると、彼女は俺の方を向いてあるポーズをとり、もう一度同じ言葉を繰り返した。

「あぁ成程。君も火妖精なのか。」

やっと彼女の言っている意味が分かった。火妖精には歌を歌う時独特のポーズをとって歌う伝統があり、俺はそれを無意識にやっていたようだ。

「ねぇ、能力構成(ビルド)はどんなの?戦闘とかする?」

「へぇ、詳しいんだな」

「MvP?PvP?」

「どっちもやってる」

「私もどっちもやるんだよ」

「へぇ、ALOも大ブームだな」

「ううん、やりだしてからもう一、二年になるよ」

「へぇ」

「さっきから『へぇ』ばっかし。もう少し気の利いた返事はないの?」

眉間にしわを寄せてこちらを睨む。きれいなコだ。きれいなコに睨まれるのに俺は弱い。
さっと一筆で描いたような一点の曇りもない顔の輪郭。黒目がちの大きな目、緩く自然な感じウェーブしたダークブラウンの髪は背中の半ばまで伸びている。何だかアーモンドのような感じだ。なにがアーモンドなのか上手く説明出来ないが、何となくアーモンドのようなのだ。

「どこに行ったりする?」

「うーん、最近はよく知り合いとヨツンヘイムに潜るな」

「ねぇ、今度連れてって」

「え?」

「今度の日曜は?」

「それはALOで、という話か?」

「ALOやってるか確かめてから言ってるんだからALOでに決まってるじゃない」

彼女はさらに俺を睨む。わけがわからなくなってきた。おミズから「食事連れてって」と誘われた事はあったが、これはどういう展開だ?

「いいけど、ヨツンヘイムに潜るなら俺は遅くまでやるよ。大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ」

「なら火妖精の領主館って言ったらわかるか?」

「分かる分かる。『獄炎館』でしょ」


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