『転生。 或いは、交差する赤と紅』
EP.02
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黒い影。 夜闇に溶け込む誰かの姿。
見覚えがあるその影は、靴の音を踏み鳴らし、俺のほうへと歩いてくる。
黒い髪。 不敵に微笑む、その横顔。 その姿は。
「桐原……先輩?」
「ああ、正解だ。 ふむ、どうやら意識ははっきりとしているみたいだね」
桐原伊織。 駒王学園三年生。 俺のよく知る、あの人だ。
けれど、何故? どうして、桐原先輩がここにいるんだ?
奇妙と不可解が混乱を招く。 判らない。 判らない。
……けれど、判ることもある。
男が見ている。 先輩を忌々しげに、憎々しげに。
負傷する右腕を押さえながらも、その双眸に憎悪を灯して。
「……まさか、仲間がいたとはな。 もしや、お前がコイツの主か?」
「いいや、彼の主人はボクじゃない。
……だが、今に来るよ。 すぐにでも、彼女はここにね」
「……なに?」
男が眉をひそめる、そのほんの僅か後。 紅い光が路面を走った。
紅い光。 線を描き、弧を描き、紋様を描くその光は。
瞬きするほどの刹那の間に、魔方陣を描き終えた。
そして、そこから現れる。 溢れんばかりの輝きとともに一人の影が。
現れたのは一人の少女。 色鮮やかな真紅をなびかせ、悠然と立つその姿。
駒王学園の制服に身を包んだ彼女は、まさか。
「ごきげんよう、堕ちた天使さん」
凛と響く彼女の声は堂々と、優雅な笑みを浮かべながら男へ向けて挨拶を。
対する男は驚愕に目を見開いて、彼女のことを見つめ返す。
「魔方陣のあの紋様、そしてその紅い髪……。 まさかっ!? グレモリーの家の者か!!」
「あら、さすがに無知ではないみたいね。
そうよ、私の名前はリアス・グレモリーで間違いないわ」
リアス・グレモリー。 駒王学園三年生。
彼女もまた、俺の先輩その人だ。
蹲る俺の傍に、リアス先輩が立ち並ぶ。
視線の先には男の姿、切っ先のような鋭い視線は確かに男を捕らえている。
一歩、男が後ずさる。 鋭い眼光に気圧されてか、或いは他に何かあるのか。
「ねえ、堕天使さん。 このまま即座に帰るというなら、今回は見逃してあげてもいいわよ?」
「……やれやれ。 まさか、こんな小僧があのグレモリーの眷属とはな。
つまり、この街はそちらの縄張りというわけか? ……まあ、いい。
今日のところは詫びるとしよう。 だが、下僕の放し飼いはしないことだな。
私のようなものが、気紛れに狩ってしまうこともあるかもしれんぞ?」
「ご忠告痛み入るわ。 けれど、もしそうなったなら、そのときは容赦しないわよ」
「ふんっ。 その言葉、そのまま返すぞ悪魔どもめ。
我が名はドーナシーク。 グレモリーに連なるものよ、再びまみえないことを願うぞ」
バサリ、と
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